研究課題/領域番号 |
22390127
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
姫野 誠一郎 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (20181117)
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研究分担者 |
角 大悟 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (30400683)
宮高 透喜 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (50157658)
藤代 瞳 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (10389182)
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キーワード | 重金属 / 毒性 / 免疫応答 / ヒ素 / サイトカイン / マンガン |
研究概要 |
本年度は下記の3つの研究を行った。1.腫瘍免疫に対するヒ素の撹乱作用、2.神経毒性におけるIL-6とマンガンの相互作用、3.ヒ素汚染地域での人体試料の収集。1.ヒ素は皮膚、肝臓、膀胱、肺などの多臓器に癌を起こすので、腫瘍免疫を低下させている可能性がある。そこで、腫瘍免疫に重要な役割を果たすnatural killer細胞の機能に対する亜ヒ酸の影響を検討した。ヒトnatural killer(NK92)細胞をIL2で刺激すると、IL-6,IL-10,TNF-β,IFN-γなどのサイトカイン産生、標的となる癌細胞やウィルス感染細胞を認識する受容体(NKp46)の発現、標的細胞を殺すためのperfblin、granzyme Bの発現が上昇したが、亜ヒ酸への曝露によっていずれも抑制された。ヒ素はnatural killer細胞の機能を抑制することにより、腫瘍免疫や感染抵抗性を低下させる可能性が示唆された。2.マンガン中毒によってパーキンソン病様症状が惹起されることが知られているが、神経細胞へのマンガン取り込み機構はよくわかっていない。ドパミン産生細胞であるSH-SY5Y細胞におけるマンガン取り込み機構を検討した結果、2価鉄輸送体のDMT1に加えて、亜鉛輸送体のZIP14が関与していることを見出した。パーキンソン病などの脳病変においてIL-6などの炎症性サイトカインが重要な役割を果たすことが知られている。そこで、SH-SY5Y細胞にIL-6を作用させたところ、ZIP8、ZIP14などの亜鉛輸送体の発現が上昇し、マンガンの蓄積が上昇した。IL6とマンガンが神経毒性の増強に相乗的な作用を示す可能性が示唆された。3.バングラデシュに加えてカンボジアのヒ素汚染地域での人体試料収集が可能になったので、尿、毛髪、爪などの試料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究で、アレルギーに関与するマスト細胞、感染免疫に関与するマクロファージ、2年目の研究で腫瘍免疫に関与するナチュラルキラー細胞を用いた実験を行い、いずれの免疫担当細胞の機能に対してもヒ素が抑制的な影響を示すことを見出した。初年度にはマンガンとIL-6との相互作用について十分に解明できなかったが、2年目の研究で神経細胞においては明らかに両者が相互作用を示すことを見出した。人体試料については、バングラデシュのみならず、カンボジアのヒ素汚染地域からも収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒ素が免疫能に及ぼす影響について、これまでマスト細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞での検討を行った。これに加えてT細胞の機能に対する影響を検討する予定である。また、複数の免疫担当細胞の間でのクロストークについても検討する予定である。ここまでの研究はすべて培養細胞を用いた研究であり、これらの結果を踏まえて、今後は動物実験も行う必要がある。しかし、この研究期間内に動物実験が可能かどうかは研究の進行状況に依存する。ヒト人体試料について、当初はバングラデシュのヒ素汚染地域のみを予定していたが、カンボジアのヒ素汚染地域からも試料収集が可能となったので、2年目の研究ではカンボジアの試料収集も行った。バングラデシュとカンボジアでは食習慣、ヒ素の汚染レベルなど様々な相違があるので、これらの影響についても検討する必要性が生じた。
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