研究概要 |
欧米では、閉経後女性の40~50%がホルモン補充療法(HRT)の使用経験を有するなど、女性ホルモン剤が広く利用されてきた。しかしながら、米国WHI研究では、それまでの先行研究で想定された冠動脈疾患の一次予防効果がみられないとして、HRT臨床試験部分を早期中止した。この研究報告を受け、欧米では心血管疾患予防としてのHRT使用者が大きく減少した。一方、わが国ではHRT使用の調査研究は少なく、その使用実態やWHI研究の影響など詳らかではない。そこで、本研究課題では、前向き女性コホート研究である「日本ナースヘルス研究」において、女性ホルモン剤使用の経時変化や、各種疾患の発生頻度を指標とした健康影響を、包括的に評価することを目的とした。 本年度は、コホート登録後4年以上を経過した13,479人の女性を対象に、ホルモン補充療法利用状況の変化を検討した。2010年末までに4年後調査票を回答した11,505人(回答率85.3%)において、45歳以上の閉経後女性は3,686人であった。そのうち、ホルモン補充療法使用経験者は521人で、閉経後女性の14.1%であった(現使用者165人、4.4%;過去使用者385人、10.2%)。2007年までのベースライン調査時での45歳以上閉経後女性におけるHRT使用経験者割合13.3%(現使用者5.8%、過去使用者7.5%)に比べて大きな変化はなかった。 HRT使用経験者における使用開始理由では、更年期症状緩和が219人(42.0%)と最も多く、骨粗鬆症治療をあげたものは75人(14.4%)であった。更年期症状緩和を理由とした女性での更年期症状は、ほてり113人(51.6%)、発汗101人(46.1%)、動悸57人(26.0%)といった血管運動性症状の訴えが多かった。このように、わが国では心血管疾患予防としてのHRT使用はほとんどみられないと考えられた。
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