研究概要 |
閉欧米では経後女性の約半数がホルモン補充療法(HRT)の使用経験を有するなど、女性ホルモン剤が広く利用されてきた。しかし、米国WHI研究が事前に想定した冠動脈疾患の一次予防効果がみられないとして、2002年にはエストロゲン+プロゲスチン併用試験を、2004年にはエストロゲン単独試験を早期中止した。この早期中止を受けて、欧米のHRT使用者は大きく減少した。一方、わが国ではHRT使用の調査研究は少なく、その使用実態やWHI研究の影響など詳らかではない。 本研究課題は、2001-2007年に登録を行った前向き女性コホート研究である「日本ナースヘルス研究」において、閉経後HRT使用の経時的変化や、各種疾患の発生頻度を指標とした健康影響を包括的に評価することを目的としている。本年度は、コホート登録者14,866人のうち、2011年末までに4年後調査に回答した12,235人(4年後調査票回収率82.3%)を対象に、登録後4年間におけるHRT利用状況の変化を検討した。 登録時にすでに閉経を迎えていた1,800人において、HRT利用経験者は288人(16.0%)[過去使用者160人(8.9%)、現使用者128人(7.1%)]であった。現使用者128人のうち、4年後調査時にも継続使用していた女性は60人と半数以下であった。一方、4年後調査時での閉経後女性4,018人において、HRT利用経験者は583人(14.5%)[過去使用者401人(10.0%)、現使用者182人(4.5%)]であった。特に、登録後4年間であらたに閉経を迎えた2,218人の女性では、4年後調査時点でのHRT利用経験者は256人(11.5%)[過去使用者177人(8.0%)、現使用者79人(3.6%)]であった。欧米のような急激な減少ではないもの、わが国でもHRT利用者割合の緩やかな減少がみられた。今後、自然閉経・人工閉経別、年齢別、更年期症状有無別など、特性によるHRT利用の違いについて分析する。
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