研究概要 |
欧米では経後女性の約半数がホルモン補充療法(HRT)の使用経験を有するなど、女性ホルモン剤が広く利用されてきた。米国ではNurses’ Health研究やWHI研究などの疫学研究で各種の健康事象に対するリスクとベネフィットが示されてきた。一方、わが国ではHRT使用の調査研究は少なく、その使用実態やHRT使用の影響など詳らかではない。本研究課題は、2001-2007年に登録を行った前向き女性コホート研究である「日本ナースヘルス研究」において、閉経後HRT使用の経時的変化や、各種疾患の発生頻度を指標とした健康影響を包括的に評価することを目的としている。昨年度までにHRT使用状況の変化などを分析し報告した。 今年度は、コホート登録者14,971人のうち、2012年3月までに4年後調査に回答した12,420人(4年後調査票回収率83.0%)を対象に、21項目からなる日本産科婦人科学会「日本人女性の更年期症状評価表」の年齢階級別の有症状割合を検討した。閉経直後の女性が多い50歳代前半に有症状割合が最も高くなっていた症状は、「顔や上半身がほてる」、「汗をかきやすい」、「目が疲れる」、「覚えにくい、物忘れ」であり、更年期症状を改善するため利用した治療法としてHRTが最も多く、次いで、漢方薬、精神安定剤、健康食品・サプリメントであった。 また、HRT使用で懸念される代表的リスクの乳がんについて、登録後4年間における閉経およびHRT利用の影響を検討した。前向き観察4年間で77例の乳癌を特定したが、閉経前女性での発生率が最も高く、閉経前女性に対する相対リスク(95%CI)は、閉経後HRT未使用者で0.60(0.31-1.2)、閉経後HRT現使用者で0.70(0.22-2.2)、閉経後HRT過去使用者で0.61(0.008-4.9)であった。
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