研究概要 |
欧米では閉経後女性の約半数がホルモン補充療法(HRT)の使用経験を有し、女性ホルモン剤が広く利用されてきた。一方、わが国では閉経後HRT使用経験者は約1割と、諸外国に比べてHRT利用は限定的である。HRT使用を阻害する主な理由に乳癌リスクへの危惧がある。そこで、日本ナースヘルス研究のデータから、わが国における乳癌発症と閉経およびHRT使用の関連を分析した。 日本ナースヘルス研究ベースライン調査にて、疾患既往歴の設問に回答した48,632人を対象に、乳癌の既往の有無、既往歴を有する女性では初診時年齢、既往歴の無い女性では調査時年齢のデータから、Kaplan-Meier法により年齢別累積罹患率、kernel平滑法により罹患率のピーク時年齢を推定した。その結果、ピーク時年齢は50.0歳であり、閉経前や周閉経期での罹患が多数をしめていた。米国白人や日系米国人女性では乳癌罹患は閉経後の70歳前後がピークとされており、閉経後の乳癌罹患が相対的に少ないことは、わが国の女性の大きな特徴と考えられた。 次に、ベースライン調査時年齢が35-59歳であったコホート登録者9,5491人を対象に、登録後4年間の乳がん発生と閉経およびHRT使用との関連を検討した。登録4年後での閉経状況は、閉経前5,414人、閉経後4,073人、不明62人であった。閉経後女性5,414人のうち、観察期間中のHRT未使用者は3,514人(86.3%)、現利用者は3,514人(10.8%)、ベースライン調査前のみ使用者120人(2.9%)であった。年齢、喫煙、BMIで調整した相対リスク(95%CI)は、閉経前女性を1とすると、閉経後HRT未使用者で0.57(0.29-1.1)、閉経後HRT現使用者で0.69(0.22-2.1)、閉経後HRT過去使用者で0.58(0.07-4.8)と、いずれもリスク増加はみられなかった。
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