我が国の高齢化のスピードは世界でも類を見ないものであり、平成24年には65歳以上人口が初めて三千万人を超え、さらに今後「団塊の世代」が65歳になり始めた点を考慮すれば、我が国の人口の高齢化はますますそのスピードを上げることが見込まれている。このような状況を踏まえると、制度の持続可能性を維持する上では、質の高い介護サービスの提供とともに、要介護者の将来推計の重要性は益々増しており、介護サービス利用の効果と要介護者の将来推計に関する研究は、ますます重要な研究課題となっている。このような状況を踏まえ、平成24年度の本研究では、保険者のもつ要介護高齢者に関する性・年齢別、要介護度に関するデータを用い、多相生命表の原理を用いて将来推計を行い、実際の要介護者数と比較することで、その特徴と課題を明らかにすることを目的とした。その結果、要介護者全体の推計としてはほぼ実際の値に近い結果を得たものの、要介護度区分別には一定の誤差が出るという結果を得た。多相生命表の原理を用いた将来推計は、現状の要介護認定の申請状況・介護サービスの提供パターンや効果が今後も継続するならばら、わずかな変化を検知することができるため、前提条件となる事象が安定している場合や比較的短期の推計に特に有利である可能性がある一方、小さな変化が一時的なものであった場合や、サンプル数が少ない場合に、小さな変化による影響が過大に推計結果に影響を与える傾向がある点には留意が必要である。要介護者数の推計に多相生命表の原理を用いた将来推計の精度を向上させる上では、客対数の増加とさらなる観察期間が必要である他、制度変更の影響や、介護サービスの利用意向といった情報も加えて一層の検討が必要であるものと考えられた。
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