研究課題
日本は世界で最も長い平均寿命を達成したが、国民の健康を更に向上するためには、予防可能な要因に起因する死亡者数に関する整合性があろて比較可能なエビデンスに基づき、健康政策やプログラムにおける優先順位を設定する必要がある。先行研究では、日本における個々の要因の影響が検証されたが、非感染性疾患及び外傷における複数の改善可能な要因の影響について、標準的な枠組を利用して比較・検証した研究はまだない。本研究では、16の要因が死因別死亡と平均余命に及ぼす影響を推定・比較した。国民健康・栄養調査および疫学調査から要因への曝露に関するデータを入手した。また、人口動態調査より不明瞭なコードを調整した死因別死亡数を、疫学調査とメタ解析より相対危険度に関する情報を得た。比較リスク評価手法(Comparative Risk Assessment,CRA)を用いて、過剰リスクが死亡と40歳平均余命へ及ぼす影響を推定した。その結果、2007年の死亡のうち、喫煙が12.9万人、高血圧が10.4万人と関連して最も多く、,続いて運動不足(5.2万人)、高血糖(3.4万人)、塩分の過剰摂取(3.4万人)、アルコール摂取(3.1万人)であった。過去数十年では、喫煙に関連するがん死亡者数が高齢者において増加する一方、高血圧に関連する脳卒中死亡者数は減少傾向にあった。複数の心血管要因が最適水準にとどまっていた場合、2007年の40歳平均余命は男女ともに1.4年延伸していたと推定された。喫煙と高血圧は、日本の非感染性疾患及び外傷による成人死亡の主要な要因であることが判明した。また、複数の心血管疾患要因が複合的にコントロールされれば、国民の健康に大きな利益をもたらす可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
次年度に予定していた研究成果に関する論文の学術雑誌への掲載を達成した。
本年度の研究成果から重要性が明らかになった複数の心血管疾患要因の絶対リスクに基づくアプローチを検討していく。また、危険因子の薬物治療による管理状況について有効カバレージの概念を用いた数値化を行い、我が国における疾病負担予防介入の現状き評価し、将来の保健医療政策の具体的な対応策を提示する。次年度は最終年度となることから、全体分析の最終的結果を確認し、研究報告書の作成や専門誌への投稿、講演の実施等を通じて、研究成果を積極的に国民へ発信し、社会に還元していく。
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http://www.jcie.or.jp/japan/csc/ghhs/lancetjapan/