約120品目の食品中のメラトニンを測定し、これを食物摂取頻度調査票のプログラムにリンクすることで食事由来のメラトニン摂取量を推定可能とした。これを基に1992年に開始した高山市住民約3万人からなるコホートにおいて、食事からのメラトニン摂取量と2008年10月までのがん死亡、循環器疾患死亡との関連を評価した。女性において食事からのメラトニン摂取量の多い上位1/4群に下位1/4群に比べ、年齢、体格、喫煙、教育歴、飲酒、婚姻歴、総エネルギーや脂肪摂取等で補正後HR=0.78と有意な循環器疾患死亡リスクの低下が認められた。男性においてはがん死亡、循環器疾患死亡とも有意な関連性は認められなかった。食事由来のメラトニンとこれらの疾患死亡リスクとの関連は国外とも評価されていない。但し、メラトニン測定方法についてはなお改良する余地があり、より精度の高い推定法が必要である。 メラトニンと閉経との関連を評価するため、乳がん検診受診者を対象に閉経状態に関する追跡調査を行なった。このうち、ベースライン2000年に閉経前と回答しており、早朝尿を得られた女性を対象に、尿中メラトニン代謝物6-sulfatoxymelatoninとその後約8年間の閉経リスクとの関連について評価した。ホルモン補充療法使用者などを除外すると89名であった。尿中メラトニン代謝物が低い(<50 ng/mg creatinine)女性に比べそれ以上の高い女性では年齢、体格、喫煙歴で補正後閉経リスクは1.36でやや高い傾向が認められたものの有意でなかった。 内因性メラトニン規定因子を小児(3-6歳)において評価した。尿中メラトニン代謝物は成人に比べ小児で高く、男児、女児ともBMIが低いと尿中メラトニン代謝物値は高かった。尿中エストロゲン、テストステロンなどのホルモン値や起床時刻、就寝時刻などの睡眠習慣とは関連が認められなかった。
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