研究課題/領域番号 |
22390133
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
八谷 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30324437)
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キーワード | 生活習慣病 / コホート研究 / 職域 / 心血管疾患 / 糖尿病 / 高血圧 / 栄養 / 肥満 |
研究概要 |
本研究の特徴は、バイオマーカーを含め詳細な曝露情報を把握した上で、大都市圏に居住する勤労者層を長期間追跡することによって、我が国における心血管疾患発症リスクの予測に有用な情報を明らかにすることである。また、食事、飲酒、喫煙、社会心理的因子など、文化や体質等の影響がある要因についても繰り返し測定を実施し、その変化を含め、疾患発症への影響を検討することである。 今年度(平成23年度)は、平成22年度に実施した自記式質問紙による標的疾患の発症の有無を尋ねる調査結果の入力とデータクリーニングを行い、次いで、疾患発症の申告のあった者については、その病歴の正確性や病型などの詳細な情報について、主治医への確認調査、医療機関における採録調査を実施した。また、対象者の追跡情報(死亡、退職や転居等による追跡不能、追跡継続など)を整理し、コホート捕捉率(77%)を把握した。なお、追跡打ち切り例のほとんどが退職によるものであった。 さらに今年度は、長期追跡コホート研究に関する実績が著しい米国ミネソタ大学を訪れ、追跡の実施方法、追跡期間中の追加調査の実施等について研究協力者と打ち合わせを行うとともに、地域における動脈硬化リスク研究(Atherosclerosis Risk in Cummnities Study : ARIC Study)の追跡25年重点的評価(第5次調査)の実際を視察したり、コホート対象者にインタビューを行った。25年間の追跡を経たARIC第5次調査では、心不全や認知機能の評価に重点を置いており、本職域コホートを長期にわたって追跡する計画を立てる上で参考になると考えられた。 心血管疾患の発症登録を継続する傍ら、蓄積されつつある糖尿病や高血圧の発症例を用いた分析を実施した。例えば、アディポネクチン低値と糖尿病発症に関する研究成果を専門誌に発表、高感度CRPと糖尿病発症、魚介類摂取や加糖清涼飲料水摂取を含む米国理想的食事摂取指標と糖尿病発症との関連を学会で発表した。これら成果をわかりやすく解説したニュースレターを発行したり、ホームページにまとめた。なお既に対象職域を退職した者も多いため、郵送による情報還元も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に実施すると計画した発症スクリーニングアンケートに基づく主治医・医療機関調査、追跡情報の整理、米国研究協力者との研究打ち合わせ、平成24年度調査の計画、発症例に関する統計解析、研究成果の対象者および一般へのフィードバックなど、ほぼ計画通り遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度もコホート追跡のための情報収集を継続する。また、年度後半には退職者を含むコホート対象者に疾患発症の有無をスクリーニングする自記式アンケートを実施する。前回調査時に、住所、電話番号、電子メールの提供を依頼しており、各種方法での連絡を試みることとしている。さらに今年度は、新規対象者を追加した包括調査を実施する予定である。研究成果は、時機を逸することなく学術誌に投稿するとともに、国内外の学会・研究会において発表を行う。また対象者および一般に向けての情報還元も継続していく。
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