研究概要 |
【目的】イソフラボン類の摂取量が多いほど卵巣がんのリスクが低い可能性が示唆されている。腸内細菌叢の働きによりイソフラボン類のDaizeinはEquolに代謝されるが、Equolを産生できる者(産生者)と産生できない者(非産生者)がいる。そこで、イソフラボン類の血中濃度を測定して、卵巣がんリスク低下との関連性を検討した。【方法】2010年11月以降に札幌医科大学医学部附属病院婦人科に入院した卵巣がん患者を症例群とし、2010年11月以降に同病院第2内科(循環器疾患と代謝性疾患専門)に入院した患者(がん患者を除く)を対照群とした症例対照研究を行った。Equol、Daizein、Genistein、および、Glyciteinの血中濃度を卵巣がん症例群と対照群について測定した。採血は早朝空腹時であった。【結果】2011年2月末までに症例群24人と対照群16人の調査が終了した。症例群と対照群の平均年齢(±標準偏差)は54.3歳(±15.5)と58.4歳(±13.0)であり有意差はなかった。Mann-WhitneyのU検定の結果、症例群は対照群と比較してEquol(P=0.081),Genistein(P=0.140),Daizein(P=0.041),Glycitein(P=0.048)の血中濃度が低かった。Fisherの直接確率検定の結果、症例群は対照群と比較して、Equol非産生者(P=0159),Genistein≦97.0ng/ml(P=0.205),Daizein≦53.8ng/ml(P=0.007),Glycitein≦1.7(P=0.086)の割合が大きかった。Spearmanの順位相関係数検定の結果、Genistein,Daizein,Glyciteinの間には症例群でも対照群でも強い有意な相関がみられたが、Equolとの間には相関はみられなかった。年齢,Equol,Daizeinの3変数を独立変数としたunconditional logistic regression modelによる解析結果、Equol産生者であること(P=0.023)とDaizein>53.8ng/ml(P=0.002)の卵巣がんリスクが有意に低かった。【結語】Equol産生者であることや、血中daizein濃度が高いことが卵巣がんリスク低下と関連している可能性が示唆された。今後は症例数を増やし、病理組織型別の解析をする予定である。
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