研究課題
代謝性疾患は循環器疾患の重要な危険因子であり、循環器疾患のさらなる増加が懸念され、循環器疾患の1次予防に関する新たな戦略を構築することの重要性は論を待たない。我が国では、代謝性疾患が動脈硬化の進展にどの様に及ぼすかについて生活習慣要因を含めた追跡研究は極めて少ない。そこで本研究では、都市部一般住民を対象とした吹田研究の2年毎に実施される健診に合わせ、頸動脈エコー検査を行い、代謝性疾患と血管内膜中膜肥厚(IMT)の進展との追跡研究について、生活習慣要因と遺伝要因の両面から合わせて検討する。また、高血圧や慢性腎疾患などの合併症により代謝性疾患がどのように動脈硬化の進展に影響を与えるのか、代謝性疾患の服薬の有無によりIMTの進展に寄与する因子を時系列に総合的に検討し、その予防方法を明らかにし、診療治療ガイドラインに資することを目的とする。頸部IMT値肥厚とその後の循環器病発症との関係では、46,561人年の追跡で、第1四分位を基準に、第4四分位の全脳卒中、脳梗塞、IHDの多変量ハザード比がそれぞれ、平均IMTで2.5、3.7、2.9、Max-IMTで1.9、1.8、2.3であり、頸動脈硬化は脳卒中、IHD発症の予測因子であることが分かった。また、頸部IMT値と血圧カテゴリー別との関係は、女性の正常血圧以上、男性の高血圧で平均IMT値の肥厚が見られ、正常高値血圧以上で最大IMT値の肥厚が見られた。女性の最大IMT値は、血圧が高くなると厚く、さらに高感度CRP高値で肥厚していることがわかった(交互作用P値=0.05)。さらに、頸部IMT値と血糖カテゴリー別との関係は、男性の境界型、糖尿病型、女性の糖尿病型で有意に平均・最大IMTが高値であった。女性の最大IMT値は、血糖が高くなると厚く、さらに高感度CRP高値で肥厚することがわかった。次年度はさらに頸動脈IMTと生活習慣病、生活習慣要因との関係を追跡研究で検討し、頸動脈硬化の進展に寄与するリスク要因を求める。
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