研究課題
ABO式血液型は個人識別に重要な指標として法医学、犯罪鑑識において利用されている。しかしながら、細胞特異的発現、コード領域に変異を伴わない亜型等の原因は未だ解明されていない。これらを解明するため、ABO式血液型遺伝子の転写調節機構を調べてきた。近年、転写調節領域を示唆するDNase I hypersensitive site(DHS)やクロマチン修飾がゲノムワイドに示され、ABO遺伝子周辺にいくつかのエンハンサー候補が示唆されている。我々はABO遺伝子の周辺約35kbについて、DHSを含む6箇所の領域をPCR増幅若しくはゲノムDNAクローンHG-1から準備し、それらをプロモーター領域上流に組み込んだレポータープラスミドを作製した。それらを赤白血病細胞K562、胃がん細胞KATOIII、胚線維芽細胞OUMS-36T-1に遺伝子導入した。ルシフェラーゼアッセイにより各領域における転写活性を調べたところ、ABO遺伝子第1イントロン内の+5.8kb siteに転写活性化領域を見出した。また、その活性は赤血球系細胞特異的であった。そこで、赤血球上では抗原量が減少しているが、分泌液中ではその量に変化がない、血液型亜型Bmにおいて第1イントロンの構造を解析することとした。Bm及びABm型112人及び正常血液型1005人から、同意を得てDNAを採取した。本研究は群馬大学医学部倫理委員会で承認済である。Bm型の+5.8kb siteの転写活性化領域周辺を数種類のプライマーでPCR増幅した結果、Bm型では第1イントμンの転写活性化領域を含む約5.8kbが欠損していることが判明した。Bm及びABm型112例中111例に同様の欠損が認められ、1例にはその欠損が認められなかった。以上より、+5.8kb siteが赤血球系細胞においてエンハンサーとして機能している可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
赤血球系細胞特異的エンハンサーを発見し、そのエンハンサーを含む第1イントロンの欠失が血液型亜型Bmの原因であることを究明でき、Bm型の遺伝子診断方法を確立できたため。
(1)赤血球系細胞特異的エンハンサーに働く、転写因子の同定を行うこと(2)細胞分化において赤血球系細胞特異的エンハンサーが果たす役割を検索すること(3)血液型亜型Bmの原因をさらに確かめるため、遺伝子の発現低下と遺伝子の欠損による影響を検索すること(4)エンハンサーを含む第1イントロンの欠失がないBm型があるが、その原因を調べること
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (7件)
DNA Cell Biol
巻: 31 ページ: 36-42
10.1089/dna.2011.1293
Cytokine
巻: 54 ページ: 6-19
10.1016/j.cyto.2010.12.019
Leg Med (Tokyo)
巻: 13 ページ: 286-288
10.1016/j.legalmed.2011.07.004
Environmental Forensics
巻: 12 ページ: 156-161
10.1080/15275922.2011.572951
DNA多型
巻: 19 ページ: 287-293
巻: 19 ページ: 294-297
Transfusion
巻: (in press)
10.1111/J.1537-2995.2011.03485.x
Blood
Not yet