研究課題/領域番号 |
22390145
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森下 竜一 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (40291439)
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研究分担者 |
島村 宗尚 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60422317)
里 直行 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (70372612)
内尾 こずえ 医薬基盤研究所, 生物資源研究部, 研究員 (70373397)
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キーワード | アルツハイマー病 / 血管 / βアミロイド / 血液脳関門 / 周辺症状 / 炎症 / インターロイキン-6 |
研究概要 |
アルツハイマー病で認められる周辺症状は臨床上、非常に重要な症状であり、介護を考える上でも大きな問題となってくる。しかし、その分子機序はほとんど明らかになっていない。今回、我々は肺炎などの感染症に伴い生じてくる意識レベルの変容の機序を明らかにすることを試みた。モデルとしてリポ・ポリサッカライド(LPS)を用いて全身炎症を惹起した。また、脳内での炎症の程度を検証する為に、我々は独自に新規開発を行った脳マイクロダイアリシス法を用いて脳間質液を回収し、IL-6濃度をELISAを用いて測定した。アルツハイマー病マウスとコントロールマウスにおいてLPSを投与した後の行動につき、自発運動、社会行動、食欲を検討した。その結果、アルツハイマー病ではコントロールマウスに比し、LPS投与後の行動の変容が重篤化、あるいは回復が遅延した。LPS投与後の脳内IL-6濃度を測定したところアルツハイマー病マウスにおいてコントロールマウスに比し、IL-6の上昇がより高度であった。末梢の血中IL-6濃度を測定したところアルツハイマー病マウスとコントロールマウスにおいて差がなかった。よって脳内におけるIL-6濃度の違いは末梢における炎症の違いに起因しないことが判明した。そこで末梢と脳の間にある血液脳関門(Blood Brain Barrier, BBB)の破綻を検討することとした。BBBの破綻の検討の方法としてFITCラベルしたアルブミンを用いた。その結果、アルツハイマー病マウスにおいては炎症惹起後のBBBの破綻がコントロールマウスに比し重篤であった。今後はアルツハイマー病におけるBBBの破綻のメカニズムを明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はアルツハイマー病マウスにおける血液脳関門の破綻のエビデンスを提示することができた。このことが全身炎症に伴う脳内への炎症の波及増幅のメカニズムと考えられ、血管からみたアルツハイマー病の病態解明に重要な知見であり、本研究はおおむね順調に進展しているとい考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病病態における血管の役割が徐々に明らかになってきた。本年度はアルツハイマー病マウスを中心に血液脳関門の破綻とそれに伴う全身炎症の波及増幅が示された。今後はヒト剖検脳の解析による血液脳関門の破綻の有無とその機序の検討を行っていく。そのうえでその機序に基づく予防・治療法の開発を行っていく予定である。血管をターゲットとしたアルツハイマー病の予防・治療薬はいまだなく、達成されれば科学的かつ社会的インパクトが高い。
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