研究課題
①バイオフィルム内に生息する粘膜関連微生物の認識機構前年度までに,laser capture micro dissectionを用いて,マウス正常および腸炎モデルの腸管バイオフィルム内から粘膜関連細菌のDNAを抽出し、16S rRNA based variable sequence tags法にて検討した。その結果をもとに、今年度は炎症腸管で特異的に変化する細菌群を解析し、腸炎の発症や進展に粘膜関連細菌ポピュレーションの異常が関係していることを示した。②抗菌物質の産生・分泌機構における細胞膜トランスポーターの役割前年度までに、健常人および炎症性腸疾患患者から単離した腸管上皮細胞におけるdefensin発現量とOCTNs,OCTs,OATs,MDRsなどの細胞膜トランスポーターの発現を測定し、炎症性腸疾患患者では,human defensin 5の発現が低下していること,OCTNsやMDRsの発現については健常人と同等であることを明らかにした.今年度は、細胞恒常性維持に必須の蛋白であるオートファジーの発現について、健常人および炎症性腸疾患患者からのサンプルを用いて検討し、炎症性腸疾患の病型や活動性によってオートファジーの発現量に差があることを見出した。③腸管および微生物由来活性物質の抗炎症・腸管保護作用前年度までに、新規乳酸菌SB88由来活性物質の成分解析を行い、この物質がポリリン酸であることを明らかにした。ポリリン酸はマウス腸炎モデルにおける腸管の組織学的炎症を改善し,マウスの生存率を向上させることを明らかにした.今年度は,この乳酸菌由来ポリリン酸がマウス慢性腸炎モデルにおける腸管障害および線維化に対して改善効果があることを明らかにした。さらに、乳酸菌由来ポリリン酸の効果は、腸管上皮細胞に発現するインテグリンによって仲介されることを示した。
2: おおむね順調に進展している
下記のように、三つの検討項目が当初の目的通り順調に進行している。①バイオフィルム内に生息する粘膜関連微生物の認識機構の解析技術を確立し、マウス腸炎モデルにおける特徴的な粘膜関連細菌ポピュレーションを示した。さらにヒト腸管からのサンプリングと解析を継続している。②ヒト腸管サンプルを用いて、抗菌ペプチドおよび腸管細胞の表面分子の発現解析を行った。加えて、オートファジーの発現解析を行い、炎症腸管における発現異常を示した。③新規乳酸菌から腸管保護活性物質を同定することに成功し、その機能についてマウス腸炎モデルを用いて解析した。その結果、本活性物質ポリリン酸は急性腸炎モデルマウスの腸管障害や生存率を向上させること、さらに慢性腸炎マウスの線維化をも改善することを示した。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
①バイオフィルム内に生息する粘膜関連微生物の認識機構バイオフィルム内の細菌叢解析の技術を確立し,正常および腸炎モデルマウスにおける腸管バイオフィルム内細菌の解析を行い、炎症腸管に特徴的な粘膜関連細菌叢を示した。また同様の技術を用いて、ヒト腸炎患者の粘膜関連細菌叢の解析を行っている。今後、さらに検討症例を増やし、炎症性腸疾患におけるバイオフィルム内細菌叢の特徴を明らかにしていく。②抗菌物質の産生・分泌機構における細胞膜トランスポーターの役割腸管上皮細胞におけるdefensin発現量、OCTNs,OCTs,OATs,MDRsなどの細胞膜トランスポーターの発現量、オートファジーの発現量を測定し、炎症性腸疾患患者の腸管上皮において,human defensin 5が低下していること、OCTNsやMDRsの発現は変化がないことをつきとめた。また、腸炎患者における腸管上皮のオートファジーの発現が、病型や活動性によって異なることをしました。今後、さらに検討症例を増やし、炎症性腸疾患におけるバイオフィルム内細菌叢の特徴やオートファジー発現との関連性を明らかにしていく。③腸管および微生物由来活性物質の抗炎症・腸管保護作用新規乳酸菌SB88由来活性物質であるポリリン酸の同定に成功し、急性および慢性腸炎モデルマウスにおける、腸管障害改善作用を明らかにした。また、この乳酸菌由来ポリリン酸の効果は腸管上皮に発現するインテグリンによって仲介されることを明らかにした。今後は,このポリリン酸の詳細な作用メカニズムについて検討していく。
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