研究課題
TGF-βシグナル伝達におけるSmadリン酸化は、その細胞生物学的機能解析にとって重要である。これまで我々は、『ウイルス性慢性肝疾患における癌化過程では、C末端がリン酸化したSmad3(pSmad3C)を介する癌抑制シグナルが、中央部に位置するリンカー部がリン酸化したSmad3(pSmad3L)を介する癌化シグナルへ変遷するため発癌しやすい環境が形成される』と報告した。そこで今回我々は、肝細胞特異的にpSmad3Lが形成されない遺伝子改変動物を用いると、かかる癌化シグナルが癌抑制シグナルに回帰するかを、発癌抑止の改善、さらに生命予後の延長と合わせて検討する。本研究では、肝細胞Smad3ノックアウトマウスにリン酸化部位を欠くSmad3を発現するトランスジェニックマウスを交配させることで、内因性Smad3の影響を受けずにリン酸化Smad3シグナルを肝細胞特異的に阻害するマウスが得られる(現在進行中)。本マウス肝組織におけるシグナルは、病理組織学的に解析し、発癌率と合わせて検討する(関 担当)。肝組織から肝細胞を初代培養し、TGF-βシグナル伝達を分子生物学的に解析する(松崎 担当)。細胞生物学的意義は、DNA合成能とアポトーシス誘導能を指標に調べる(岡崎 担当)。癌化から癌抑制へのSmad3シグナルの変遷、発癌率低下が確認されれば、癌化シグナルの可逆性が証明される。
4: 遅れている
Smad3ノックアウトマウスとSmad3遺伝子変異トランスジェニックマウス作成が予定通り進んでいない。これまで予想された表現系マウスを作成するに至っていない。
(1)リン酸化部位を欠くSmad3トランスジェニック(Tg)マウスの作成発現カセットの作成を急ぎ、系統を立する。(2)ジーンターゲッテング法による肝細胞Smad3ノックアウト(KO)マウスの作成機能発現に重要なSmad3エクソン8を欠損したターゲッテングベクターの構築を進め、胚盤胞期胚への遺伝子操作したES細胞の微注入・仮腹への胚移植、キメラマウス作成する。
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