研究課題
平成23年度は、心筋前駆細胞移植が心筋梗塞後の内在性心筋幹細胞の増殖・分化に作用しているか確認するために、新生心筋を評価するための遺伝子改変マウス(alpha-MHC MerCreMer/CAG-CAT-LacZマウス)を作成し、内在性心筋細胞由来の新生心筋の評価方法を確立した。本マウスは、タモキシフェンを投与することにより、心筋特異的にalpha-MHCプロモーターを介してMerCreMer融合蛋白を発現し、Cre リコンビナーゼ活性によりLacZ遺伝子が発現するため、ベータガラクトシダーゼ活性により、Xga1染色を行うと全ての心筋細胞が青く発色する。そこで、タモキシフェンを投与して既存の心筋細胞にベータガラクトシダーゼを発現させてから心筋梗塞を作成し、Xga1染色陰性、収縮蛋白陽性かつ横紋構造明瞭な心筋細胞を新生心筋と定義して定量評価した。その結果、成体マウスでは心筋梗塞後、梗塞境界領域に心筋再生が確認された。次に、leukemia inhibitory factor(LIF)の心筋再生効果について検討した。LIFは心筋梗塞後の新生心筋の数を増加させ、心臓sidepopulation細胞のSTAT3を活性化し、静止期から細胞周期へ移行させた。次に、核酸同族体(BrdU)を用いて胎児期のMerCreMer/CAG-CAT-LacZマウスの細胞を標識することにより、心臓組織幹細胞を、成体になった時点でBrdUを保持する細胞として同定する方法を確立した。その結果、再生心筋の一部は核酸同族体による細胞標識が保持されており、内在性心臓幹/前駆細胞由来であることが明らかになった。以上の結果から、成体マウス心筋細胞は心臓組織幹細胞を起源として再生しており、LIFは心筋梗塞後の心臓組織幹細胞の増殖を促進することにより、心筋再生に寄与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度に継続を予定していた、心筋前駆細胞由来のパラクライン因子として、抗炎症作用を有する蛋白を同定し、その効果の実証実験は平成22年度にほぼ完了した。本年度は、細胞移植によるホスト心筋幹細胞の増殖・分化促進効果と心筋細胞再生効果を検証するために、遺伝子改変マウスによる評価方法を確立し、leukemia inhibitory factor 用いて評価方法が有効か検討し得た。また、新生心筋と内在性幹細胞の連関について、label retaining cellによる評価方法を確立できた。
平成23年度に、RGDペプチド配列を修飾した自己組織化ナノファイバーを用いて、心筋前駆細胞の長期3次元培養を行うことにより、マウス心筋梗塞モデルに長期生着可能なグラフト移植方法を確立した。平成24年度は、本年度に確立した新生心筋を評価するための遺伝子改変マウスを用いて、心筋前駆細胞移植によるホスト内在性心筋幹/前駆細胞の増殖・分化における効果について検討する。
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