平成24年度は、心筋梗塞後に核酸類似体を投与したマウスの心臓より心臓の幹/前駆細胞分画のひとつである心臓side population(SP)細胞を単離し、核酸類似体の取り込みについて免疫染色法を用いて検討した。その結果、LIF遺伝子導入マウスでは核酸類似体陽性心臓SP細胞の頻度が対照マウスに比較して有意に高かった。また、LIF遺伝子導入マウスおよび対照マウスより心臓SP細胞を心筋梗塞後に単離し、抗γH2AX抗体で免疫染色してγH2AX fociの数を定量すると、LIF遺伝子導入マウスにおいてγH2AX fociが少なかった。以上の結果から、成体マウス心筋細胞の一部は心臓組織幹細胞を起源として再生しており、LIFの作用機序のひとつとして、心筋梗塞後の心臓組織幹細胞のDNA傷害を軽減し、細胞周期への移行を促進することにより、心筋再生に寄与していることが示唆された。 次に、自己組織化ナノファイバー内で心筋前駆細胞を3次元培養して作成した移植床を、平成23年度に作成したα-MHC MerCreMer/CAG-CAT-LacZマウスの心筋梗塞モデルに移植し、Xgal染色陰性の新生心筋の数を非移植マウスと比較した。その結果、心筋前駆細胞移植マウスは対照マウスに比較して、梗塞領域、境界領域、また、一部健常心筋においても新生心筋が多かった。この新生心筋がホストの心筋幹/前駆細胞由来か、移植した心筋前駆細胞由来かは検討を要するが、残存している移植床内にはXgal染色陰性心筋細胞は認められない事、Xgal染色陰性心筋細胞は広範囲に心筋組織に分布している事から、心筋前駆細胞移植床からの分泌因子が間接、または直接作用して心筋幹/前駆細胞の増殖あるいは分化を促進していると考えられた。
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