研究概要 |
動脈硬化の進展と破綻における心臓周囲脂肪細胞の役割を調べるために、冠動脈バイパス手術を行う患者(CAD群:38例)、および弁形成術を施行する患者(Non-CAD群:40例)において心臓周囲脂肪および皮下脂肪を採取した。mRNAを抽出し、定量的RT-PCRにてサイトカイン発現を調べた。CAD群の心臓周囲脂肪においては、Non-CAD群に比べて、IL-6,TNFαといった炎症性サイトカインの発現が亢進していた。組織学的検討では、CAD群ではnon-CAD群に比較して、T細胞、マクロファージの浸潤が亢進していた。また、脂肪組織中に浸潤したマクロファージのサブタイプを免疫染色で調べたところ、炎症性サイトカインの発現とマクロファージの極性(M1/M2 ratio)は正の相関関係を示した。一方で、M1/M2 ratioと抗炎症性サイトカイン(IL-10,AMAC-1)との間には、負の相関が認められた。また、M1/M2 ratioはGensini scoreと良い相関を示した。さらに、冠動脈疾患患者における心臓周囲脂肪組織における炎症反応は、病原体センサーである、TLR1,TLR2,TLR5,MyD88の発現が亢進していた。また、急性冠症候群患者の末梢血においては、病原体センセーのリガンドであるHMGB-1の濃度が上昇していた。冠動脈における動脈硬化病変の形成には、冠動脈周囲の脂肪組織における炎症性マクロファージの浸潤と、炎症性サイトカインの発現亢進が影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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