研究概要 |
ヒト肺組織より分離培養に成功した肺胞上皮前駆細胞(AEPCs : alveolar epithelial progenitor cells)は,肺胞壁に存在する肺胞II型上皮細胞(ATII : alveolar type II epithelial cell)の前駆細胞である.このAEPCsを用い,平成22年度は以下の3点にテーマをしぼり研究を実施した. 1.AEPCs固有またはATII共通の遺伝子発現解析 AEPcs固有またはATII共通の遺伝子発現を解析するためには,基準となるヒトATII細胞の存在が必要である.しかし,サト肺組織から純度の高いATIIを分離する方法は今まで報告されていない.そこで,まずヒトATII細胞分離法の確立を行った.その結果,上皮細胞に固有に発現する細胞表面マーカーを2種類以上用いることによって,ATIIを約95%以上の純度で分離することに成功した.この新規分離法を用い,様々な疾患肺由来のATIIとAEPCsの遺伝子発現を解析した.その結果,慢性閉塞性肺疾患(COPD : chronic obstructive pulmonary disease)由来のATII固有に発現する遺伝子群を同定することができ,現在論文作成中である.また,同じ新規分離法をマウス肺に応用し,同様に遺伝子解析を進めており,将来的なマウス肺疾患モデル確立を目指して研究中である. 2.AEPCsよりATIIへの指摘分化条件の確立 AEPCsをATIIへ簡便に分化させ,またその分化を評価する技術を確立することは,この細胞を用いた創薬に大変重要である.そのため,指摘分化条件の確立を目指した.その結果,3種類の増殖因子の組み合わせと細胞外基質の存在によって,以前より簡便にATIIへ分化させる技術を開発した. 3.様々なAEPCs cell lineの拡充 将来的な創薬クリーニングを目指した準備として,東北大学病院呼吸器外科および石巻赤十字病院呼吸器外科の協力の下,同意が得られた肺切除症例より肺組織の提供を受け,様々な年齢および疾患を背景とするAEPCs cell lineを拡充中である.
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