研究概要 |
ヒト肺組織より分離培養に成功した肺胞上皮前駆細胞(AEPCs: alveolar epithelial progenitor cells)は,肺胞壁に存在する肺胞II型上皮細胞(ATII: alveolar type II epithelial cell)の前駆細胞である.昨年度,ヒト肺組織から純度の高いATII分離法を開発した (Am J Respir Cell Mol Biol, 2012).今年度は.分離したATIIとAEPCsを用い研究を実施した. 1.AEPCs とATII遺伝子発現相違:AEPCs とATII遺伝子発現の差異を解析した.AEPCでは上皮間葉移行に関わる遺伝子がATIIに比べると強く発現していることが明らかとなった (Respir Invest, 2012).これらの因子をターゲットとした化合物が,肺炎症後の組織修復促進に有効であるため,新規薬剤のスクリーニングを開始した. 2.疾患肺由来ATIIの機能解析:新規肺胞細胞分離法開発により,疾患肺由来の肺細胞機能解析が可能となった.そこで,慢性閉塞性肺疾患 (COPD)由来のATIIにおける遺伝子発現を解析したところ,MHC class I pathwayに関与する遺伝子群の発現が増強していることがわかり,COPDの新たな病態解明につながると考えている (BMJ Open, 2012).また,線維化肺由来のATIIはパンデミックインフルエンザウィルスに易感染性であることを明らかした (J Infect Dis, 2013). 3.AEPCs cell lineの拡充:昨年度に引き続き,東北大学病院呼吸器外科および石巻赤十字病院呼吸器外科の協力の下,同意が得られた肺切除症例より肺組織の提供を受け,AEPCs cell lineを拡充を行った.
|