研究課題
本年度は主に進行性肺線維症患者の肺組織を用いた病理的な解析を開始した。特発性肺線維症(IPF)患者肺においては線維化病変において毛細血管密度が著しく減退し、むしろ小葉の内部の毛細血管が増殖していることからしても、患者血液中の循環線維細胞はまだ線維化の進んでいない小葉間隔壁、および胸膜下組織に浸潤することで線維化が亢進していく。一方、肺胞壁自体が線維化していく線維性非特異性間質性肺炎(f-NSIP)では小葉内の肺胞毛細血管から循環線維細胞が浸潤して線維化が亢進する。さらにIPF患者肺では線維化病変内のリンパ管が消退することから、肺内線維化の情報が血液を介しては伝わらないのに対し、f-NSIPでは毛細血管から浸潤した循環線維細胞が筋線維芽細胞に分化して変化する産生物が、残存するリンパ管を介して骨髄に伝達される可能性を示した。これらの結果は、患者末梢血中のmiRNAなどからも患者肺の病態の情報を得る本研究課題の有効性を示唆している。患者検体や動物疾患モデルマウスから得られる循環線維細胞やmiRNAの解析に関しては、学内の倫理委員会の承認も得られ、順次検体の解析準備を整えた。疾患マウスを用いた間質性肺炎とメタボリックによる慢性炎症の検討も進行中である。本年度は喫煙による肺気腫病態形成に関連があると報告されたmTOR抑制因子Rtp801の発現(Nat Med 2010,16:768)が、肺気腫患者肺だけでなく、気腫合併肺線維症の線維化病変にも発現するのみならず、IPFやfNSIPなどのような進行性肺線維症患者肺や移植摘出肺などで得られた非喫煙者の線維症患者肺にも強発現することを見出した。このことはRtp801が慢性炎症機序に重要な因子である可能性を示唆しており、本研究課題とも大きく関連することであり、さらに検証を継続する。
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