研究概要 |
本研究の目的は,難治性呼吸器疾患に対して,粉末製剤化した核酸あるいは分子標的薬を経気道的に疾患肺へ導入することで,標的となる遺伝子や分子の発現や機能を抑制することが可能か,そして,この治療的介入が病態の進展阻止につながるのかどうかを検証することである.本年度は,Green fluorescence protein(GFP)を全身の細胞に発現しているGFPトランスジェニックマウスに対して,粉末製剤化したGFPに対するsiRNA(GFP-siRNA)の気道投与により,実際にGFPの発現が抑制されるのかを検証した.以下に挙げる成果を得た. 1.麻酔下にてマウスに対する経口挿管を行い,粉末化siRNAを経気道投与する手法の開発に成功した. 2.キトサンをカチオン性ベクターとして,超臨界二酸化炭素晶析法及び噴霧乾燥法を用いてGFP-siRNAの粉末製剤化に成功した. 3.粉末化したGFP-siRNAの経気道投与により,蛍光顕微鏡下での観察にて,細気管支レベルさらには肺胞レベルでのGFPによる蛍光強度の低下を認めた.現在,どのようにしてこの蛍光強度の定量化を行い,非投与群との比較を行うのかを検討中である. 4.GFPを恒常的に発現しているLewis lung carcinoma(LLC)細胞(GFP-LLC)の作製に成功した.マウスへの尾静脈投与により,GFP発現による蛍光を強く認める多発性の腫瘍の存在が確認できた.現在,粉末化したGFP-siRNAの投与により,この腫瘍内の蛍光強度に変化を認めるのかを検討しているところである.
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