研究課題/領域番号 |
22390167
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
井上 博雅 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30264039)
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研究分担者 |
福山 聡 九州大学, 大学病院, 助教 (50380530)
前山 隆茂 九州大学, 医学研究院, 助教 (40380456)
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キーワード | 気管支喘息 / サイトカイン / インターロイキン13 |
研究概要 |
重症喘息においては、2型ヘルパーT細胞(Th2)が主に産生するサイトカインIL-13が重要な役割を担っている。本年度は、T細胞におけるIL-13発現の機序とその制御を以下のように検討した。 Jak/STATサイトカインシグナル経路を抑制的に制御するSOCS3をT細胞で恒常的に発現亢進させるとTh2応答性が増強する。そこで、T細胞でのSOCS3発現抑制により喘息反応がコントロールできるか否かを検討したところ、SOCS3欠失マウスからのCD4T細胞のTh2分化は低下しており、CD4T細胞にSOCS3 siRNAを導入後にマウスに移入し抗原を曝露すると喘息反応が抑制された。T細胞でのSOCS3のコントロールが新たな喘息治療ターゲットとなりうることが明らかとなった。 マウス喘息モデルに対するウィルス気道感染時に作用する2本鎖RNA(dsRNA)の影響を調べたところ、共刺激分子B7-H1(PD-L1)を介してCD8T細胞からのIL-13産生を増強し、喘息反応を悪化させていることが判明した。この成果は、ウィルス気道感染時の喘息増悪機序の解明に繋がるとともに、治療薬の作用メカニズム解析に応用できるものと考えられる。 リンパ濾胞内に存在するリンパ濾胞型ヘルパーT細胞はIL-4を産生し抗体産生の制御に関わっている。IL-4遺伝子上に存在する転写因子GATA-3の結合するHS2領域を欠損したマウスではB細胞による抗体産生が大きく低下したが、Th2細胞によるアレルギー反応には影響せず、アレルギー反応と抗体産生のメカニズムの違いが明らかとなった。 さらに、喘息患者の末梢血CD4T細胞検体を収集し、喘息/COPD/肺線維症などを合併した患者の手術肺より気道検体を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAK阻害薬の抗喘息効果、気道ウイルス感染を防御性するIFNλ発現へのIL-13シグナルの関与、転写因子GATA-3とHS2領域との関係を初年度に見出し、その結果に基づき本年度はT細胞におけるTh2サイトカイン発現の機序とその制御を検討した。これらの成果から、当初計画した研究目的は現在までおおむね順調に達成しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果に基づいて今後は、気道上皮特異的SOCS3欠損マウスを用いた気道炎症における機能解析、気道上皮細胞でのdsRNA刺激後のB7-H1発現亢進のメカニズムを検討する。さらに、CD4T細胞が持続的にIL-13を高発現する脂質メディエーター12-HHT受容体KOマウスを用いて、そのメカニズムを解析する。また、IL-13KOマウスなどを用いて気道構築細胞でIL-13により誘導されるmicroRNAの機能解析を行うとともに、ヒト検体でのIL-13誘導microRNAの発現を解析していく。
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