WNK1キナーゼは低浸透圧かつ低Cl下、または高浸透圧下にて活性化し、SPAKとOSR1をリン酸化することが知られているが、WNKキナーゼ自体の活性化の機序は明らかになっていない。今回、COS7細胞を用いて、WNK1の活性化を様々な浸透圧、電解質下で検討した。OSR1のリン酸化は培地を希釈した低浸透圧刺激で亢進した。各々のイオンが低値の等浸透圧培地にて検討したところ、低Cl^-、低K^+溶液にてOSR1のリン酸化亢進を認めた。また、ion channel blockerによる検討で、K^+ effluxがOSR1のリン酸化の刺激因子であることが明らかになり、細胞外K^+濃度がWNK1の制御因子の一つであると考えられた。 また、偽性低アルドステロン症II型のモデルであるWnk4 D561A/+ノックインマウスの解析の結果、Na-Cl共輸送体(NCC)のリン酸化の亢進が、PHAIIにおける高血圧の主たる原因であり、それは変異型WNK4がWNK-OSR1/SPAK-NCCリン酸化刺激伝達系を刺激するためであることが知られている。今回、この伝達系でのOSR1/SPAKの直接的な関与の有無を調べるために、Wnk4 D561A/+ノックインマウスと、WNK4のリン酸化部位を不活化したOSR1とSPAKのノックインマウスを交配させトリプルノックインマウスを作製し、NCCのリン酸化レベルを検討した。Wnk4 D561A/+を背景にもつトリプルノックインマウスにおいて、Spak +/+ Osr1 +/+に比べると、Spak T243A/T243A Osr1 T185A/+ではNCCリン酸化レベルは97%減弱していた。これらの結果より、OSR1とSPAKはNCCのリン酸化に直接的に関与し、WNK-OSR1/SPAK-NCCリン酸化刺激伝達系を構成することが判明した。
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