研究概要 |
野生型WNK4の生理的意義を明らかにするため、WNK4 BACトランスジェニックマウスを作成し,解析した。WNK4の発現量に応じてLow copy群,High copy群に分類しそれぞれの血圧,採血,腎でのタンパク発現量を検討したところ、WNK4発現量に応じて有意な血圧上昇を認めた。また採血ではHigh copy群で代謝性アシドーシスを支持する所見を得,腎におけるOSR11SPAK,NCCのリン酸化は,いずれもWNK4の発現量増加に応じて著明に亢進していることが確認された。このことから野生型WNK4トランスジェニックマウスは偽性低アルドステロン症II型(PHAII)様の表現型を呈する事が確認され,野生型WNK4がNCCに対する正の制御因子である事が確認された。 また、WNK1については、腎臓における機能は不明な点が多かった。WNK1の血圧調節における生理的役割を検討するため、gene-trap法により作製したWNK1(+/-)マウス、及びPHA II backgroundを持つWNK1(+/-)WNK4(D561A/+)マウスを用意し、WNK-OSR1/SPAK-SLC12A系に着目して解析した。WNK1の発現減少は血圧や腎臓におけるWNK-OSR1/SPAK-SLC12A系への影響を及ぼさず、これはPHA II backgroundでも同様であった。一方、WNK1(+/-)マウスでは大動脈におけるNKCC1のリン酸化の減少、腸間膜動脈のトーヌス低下を認めた。このことから、WNK1は腎臓よりむしろ血管系において血圧調節に関与していることが示唆された。
|