研究課題/領域番号 |
22390172
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堂浦 克美 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00263012)
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キーワード | 神経分子病態学 / 治療学 / プリオン / 宿主防御機構 / 糖質 |
研究概要 |
私たちの体内には蛋白質性病原因子であるプリオンの増殖を抑制する機構が備わっており、その機構は何らかの外的要因等の影響を受け、プリオンの増殖をコントロールしている可能性が予想されるが、発病に関わるこれらの生体防御機構については不明である。研究代表者は、食品や薬剤の添加物等として日常的に経口摂取しているセルロース誘導体化合物が、プリオン病に対して長期間にわたる優れた発病抑制効果を発揮することを発見した。また、これまでの研究で、セルロース誘導体化合物の作用には宿主の免疫系が関与していることを示す手掛りを得ている。そこで、このセルロース誘導体化合物の作用に関わる宿主因子群(プリオン抑制因子群)を解明することが申請研究の目的である。 セルロース誘導体化合物の投与により免疫系組織あるいは脳内で誘導される宿主因子群を、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子解析と2次元電気泳動を用いたプロテオミクス解析による組織全体レベルでの分子発現解析、in situの免疫組織学的解析、そして試験管内での免疫細胞学的解析を実施して探索した。全ての探索研究を終了させ、研究成果の取りまとめを行い、セルロース誘導体化合物の投与により変動する一群のサイトカイン・ケモカインに関連する遺伝子群を絞り込むことができた。また、これらの遺伝子群について、プリオン抑制作用の有無について細胞レベルでの評価作業を進め、プリオン抑制因子ならびに抑制因子に関連する治療標的分子を特定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りに研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
プリオン感染細胞にてプリオン抑制作用が観察された因子ならびに関連因子について、プリオンを感染させたTg7マウスあるいはTga20マウスに遺伝子導入による遺伝子発現や遺伝子サイレンシング、あるいは中和抗体や阻害化合物の生体内投与を行い、インビボでの効果を確認する作業を行う。また、発現が変動する宿主因子(特に免疫関連因子)の作用を、セルロース誘導体化合物を投与したマウスにおいて変動させる処置(因子そのものや発現細胞などの投与ならびに因子の阻害剤や中和抗体の投与)を行う実験によって、セルロース誘導体化合物投与における変動因子の役割を確認する作業を継続して実施する。一方、セルロース誘導体化合物の効果を代替する低分子化合物探索研究として、セルロース誘導体化合物投与により誘導されるプリオン抑制因子やその下流の関連因子、またはそれらの因子の発現調節に関わる因子に対する低分子化合物のスクリーニングを継続して実施する。さらに、セルロース誘導体化合物の投与が免疫系細胞機能に与える影響とそのマウス系統差の解析を行い、セルロース誘導体化合物の作用に関わる宿主要因を調べる。 最終年度として、3年間の研究を結実させ、インビボでプリオン病発症抑制因子群について結論をまとめるとともに、これらの因子群や下流因子群が新たな治療標的分子群であることを、セルロース誘導体化合物の効果を代替する低分子化合物を見つけ出すことにより実証する。また、マウス系統差と免疫系細胞機能との解析から、セルロース誘導体化合物の効果に大きな影響を与える宿主因子を明らかにする。
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