私たちの体内には蛋白質性病原因子であるプリオンの増殖を抑制する機構が備わっており、その機構は何らかの外的要因等の影響を受け、プリオンの増殖をコントロールしている可能性が予想されるが、発病に関わるこれらの生体防御機構については不明である。研究代表者は、食品添加物等として日常摂取しているセルロース誘導体化合物(CE)が、プリオン病に対して長期間にわたる優れた発病抑制効果を発揮することを発見し、CEの作用には宿主の免疫系が関与していることを示す手掛りを得ている。このCEの作用に関わる宿主因子群を解明することが申請研究の目的である。 この3年間に、CE投与により免疫系組織あるいは脳内で誘導される宿主因子群を、DNAアレイ解析・蛋白質解析による組織全体レベルでの分子発現解析、in situの免疫組織学的解析、そして試験管内での免疫細胞学的解析を行い探索してきた。また、CE投与が免疫系細胞機能に与える影響とそのマウス系統差の解析を行い、CE作用に関わる宿主要因を調べた。各種アレイ解析では、CE投与により変動する一群のサイトカイン・ケモカインに関連する遺伝子群を絞り込むことができ、細胞レベルならびにビボレベルでの評価作業から、候補因子に関連する治療標的分子を同定した。また、マウス系統差と免疫系細胞機能との解析から、特定の胸腺細胞がCE効果に大きく影響することや、CE投与により誘導される特定のサイトカインが抗プリオン活性を発揮することを発見した。
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