研究課題/領域番号 |
22390176
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河原 行郎 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (80542563)
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キーワード | 脳神経疾患 / RNA / 筋萎縮性側索硬化症 / 痴呆 / 遺伝子 |
研究概要 |
RNA結合タンパク質TDP-43は、筋萎縮性側索硬化症(AILS)の病態に深く関与している。このため、TDP-43の生理的機能、特にマイクロRNA生成に果たす役割を明らかにすることから、ALS病態解明への貢献を目的として本研究をスタートさせ、本年度は以下の結果を得た。 TDP-43を細胞株中でノックダウンすると約10個のマイクロRNAの発現が低下し、これらは転写レベルではなく、転写後レベルでの生成障害が原因と考えられた。このため、TDP-43が実際にどのように転写後レベルでこれらマイクロRNAの生成に関与するのか解析を進めた。その結果、核内でDrosha複合体とC末端領域を使って結合し、特定のマイクロRNAの生成を促進する役割を果たしていることを解明した。さらに、TDP-43は、一部細胞質中にも存在しており、Dicer複合体と結合していることを発見した。この結合には、Drosha複合体よりも長いC末端領域が必要であることを見出した。TDP-43は、この複合体中でさらに特定のマイクロRNAの生成を促進する役割を果たしていることを解明した。Neuro2a細胞株で、TDP-43をRNAi法によりノックダウンするとneuriteの伸長が障害され、ここにTDP-43が制御するマイクロRNAの一つmiR-132を共発現させると、伸長障害が改善されることを見出した。この結果から、TDP-43によるマイクロRNA制御は、neuriteの伸長を促進する役割に関与していることを解明した。以上の結果をまとめ、米国科学アカデミー紀要に論文として発表した。来年度は、さらにTDP-43が果たすRNA制御機能の全体像を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としたTDP-43によるマイクロRNA制御機構のメカニズムの解析は、培養細胞を用いて予定通り進み、すでに論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、主として培養細胞を用いてTDP-43が制御するマイクロRNAと、その制御メカニズムを明らかにした。来年度は、よりALS病態と直接関連するマイクロRNAを同定するため、マウス脊髄運動ニューロンを用いた実験を行う予定。さらにTDP-43が果たすRNA制御機能の全体像を明らかにする計画である。
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