研究課題/領域番号 |
22390178
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 九州大学, 医学研究院, 教授 (40183305)
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研究分担者 |
河村 信利 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00432930)
松下 拓也 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00533001)
三野原 元澄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (70398113)
河野 祐治 九州大学, 医学研究院, 特任講師 (20333479)
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キーワード | 多発性硬化症 / 視神経脊髄炎 / HLA / IL7RA / 自己抗体プロファイル / バイオマーカー |
研究概要 |
日本人脱髄性疾患をNMO/NMOSD(NMO;視神経脊髄炎)とnon-NMO/NMOSD MS(MS;多発性硬化症)に分類し、HLA-DRB1およびDPB1アリルを健常者と比較した。その結果、MS患者では、DRB1^*0405とDPB1^*0301が疾患感受性遺伝子、DRB1^*0901とDPB1^*0401が疾患抵抗性遺伝子となっていた。一方、NMO患者では、DRB1^*1602とDPB1^*0501が疾患感受性遺伝子、DRB1^*0901が疾患抵抗性遺伝子となっていた。また、DRB1^*1602とDPB1^*0501は抗AQP4抗体陽性のNMOのみで疾患感受性遺伝子となっていた。以上の結果から、日本人脱髄性疾患では、疾患表現型に関わらずDRB1^*0901が共通の疾患抵抗性遺伝子である一方、疾患感受性遺伝子は疾患表現型により異なることを明らかにした。次に、昨年度我々が発見した日本人MSの疾患感受性遺伝子であるIL-7RA rs6897932のCC遺伝子型とDRB1^*0405との相互作用を検討した結果、CC遺伝子型とDRB1^*0405アリルの両者を有する場合にのみ、日本人のMS疾患感受性遺伝子に寄与することを見いだした。 小麦胚芽を用いた無細胞タンパク質合成系で作製された蛋白ライブラリとアルファスクリーンによりMSに特徴的な自己抗体プロファイルの作成と新規自己抗体の検索を行なった。ミエリンや炎症関連抗原に限定せずに2182種類の蛋白質を用いて、MS患者で自己抗原となりやすい、反対になりにくい蛋白質の候補が得られ、引き続く後期スクリーニングの選定が進んだ。さらに、これまでに準備できた182種類の蛋白質を用いて、MS患者再発期、健常者、筋萎縮性側索硬化症(ALS)重症筋無力症(MG)とGuillain-Barre症候群(GBS)患者血清での結果と比較検討し、自己抗原と判定された抗原数は、ALS特異的は6種類、MS特異的は2種類、GBS特異的は0種類、MG特異的は1種類、健常者特異的は2種類あった。MS患者に多い自己抗原として、potassium channel tetramerisation domain containing 14、transcription factor B1、mitochondrialなどがあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MS及びNMOの疾患感受性遺伝子となっているHLAクラスII遺伝子及び非HLA領域の遺伝子を同定し、MS発症に寄与する遺伝子間の相互作用を明らかにしたこと。網羅的髄液サイトカイン解析と膜蛋白を標的とした自己抗体のantigen microarray解析により病態特異的な免疫プロフィールを明らかにしたこと。以上のことから、(2)と区分した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析で得られた疾患感受性遺伝子・疾患抵抗性遺伝子とサイトカインバランス、自己抗体プロフィールから、MSの病態をネットワーク解析し、疾患特異的な病態のフローチャートを作成する。同定された疾患感受性遺伝子を導入にしたトランスジェニックマウスを用い、病態フローチャートで疾患特異的な役割を担う免疫分子を標的とするモノクローナル抗体を作成し、治療効果を検証し、新規治療法を開発する。
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