研究課題/領域番号 |
22390180
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
下濱 俊 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60235687)
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キーワード | 神経変性疾患 / 骨髄幹細胞 / 移植 / 治療 / パーキンソン病 / アルツハイマー病 / 骨髄間葉系幹細胞 / 血液脳関門 |
研究概要 |
本研究の目的は、自己骨髄幹細胞移植治療が難治性神経変性疾患の制圧に向けた治療体系の新たな選択肢になりうるか否かについて、疾患モデル動物を用いて解析し、難治性神経変性疾患に対する新しい治療戦略を考案することである。平成23年度は、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化能を有する骨髄間葉系幹細胞を移植細胞として用いる調整法を確立した。マウスやラットの大腿骨より骨髄幹細胞を採取し培養ディッシュに付着する細胞を骨髄間葉系幹細胞として増殖させ、表面マーカーの発現プロファイルによって特徴付けした細胞を調整した。市販の蛍光蛋白質をコードするEGFP遺伝子を導入したマウスおよびラットから骨髄間葉系幹細胞を調製し移植することで内在性の細胞と区別して追跡することにした。本年度は難治性神経変性疾患としてパーキンソン病を対象にモデル動物を作製した。神経毒である6-hydroxydopamine(6-OHDA)をラット黒質あるいは線条体に注入し作製した。6-OHDA投与ラットに骨髄間葉系幹細胞を静脈内から移植し、ドーパミン神経障害に対する神経保護効果について解析した。6-OHDA投与側のドーパミン神経が半側性に選択的神経細胞死を起こし、薬物誘発旋回運動が認められる。この旋回運動量を解析することで、ドーパミン神経細胞障害の重症度を評価した。また、ステレオロジーシステムを用いてドーパミン神経の生存率を三次元的に解析する方法を習得した。作用メカニズムの解明が必要があるが、線条体への6-OHDA投与ラットに骨髄間葉系幹細胞を静脈内から移植したラットにおいて薬物誘発旋回運動の改善が認められた。アルツハイマー病の動物モデルのためにAPP/Presenilinのトランスジェニックマウスを購入し、それを大学内の施設で実験に使用できるように育成した。さらにβアミロイドの沈着について組織学的に解析を開始した。学習機能の解析のために水迷路試験の装置を準備し、その解析方法のための実験について着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨髄間葉系細胞の採取の樹立ができている。パーキンソン病およびアルツハイマー病の動物モデルの作製に成功し、その行動学的および記憶学習の解析法も順調に準備できている。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンソン病モデル動物およびアルツハイマー病モデル動物への骨髄細胞移植による効果を判定し、その作用メカニズムについて生化学的、組織化学的に解析する。将来の神経変性疾患に対する新たな治療法としての可能性について科学的に検討する。
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