研究課題/領域番号 |
22390182
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 則宏 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10158975)
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研究分担者 |
鳥海 春樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30528203)
清水 利彦 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40265799)
柴田 護 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60286466)
舟久保 恵美 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90548538)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 片頭痛 / 大脳皮質性拡延性抑制 / 三叉神経血管系 / 三叉神経節 / TRPV1受容体 |
研究概要 |
片頭痛は前兆から頭痛へ進展する時間経過を示す疾患である.前兆は可逆性の脳局在神経症状で持続時間は60分未満とされている.前兆の病態には大脳皮質性拡延性抑制(cortical spreading depression; CSD)が関与すると考えられている.CSDは一過性に神経細胞が脱分極したあと電気的活動に抑制された状態が15分から30分間継続する現象であり,可逆的な神経症状として出現する片頭痛の前兆を説明できる.平成24年度は,CSDと性周期についての関係を検討した.片頭痛発作の一部は,月経周期と関係することから,KClにより誘発されるCSDの閾値を性周期の各phaseにおいて検討した.雌性マウスの性周期は,1) 卵胞発育期にあたり血中エストロゲン濃度がピークに達している発情前期,2) 排卵期に相当する発情期,3) 発情後期および4) 血中エストロゲン濃度が上昇をはじめる発情休止期の4phaseに分類される.この4 phaseの中で発情休止期において, CSDを誘発するKCl濃度が有意に低値を示すことを明らかにし, CSDを誘発させる閾値が,性周期に伴い変化している可能性を示した.片頭痛における頭痛は,何らかの刺激が三叉神経節に作用すると脳硬膜および脳硬膜血管に神経原性炎症が生じ血管透過性の亢進,血漿蛋白の流出,プロトンの放出,血管拡張などが惹起され生じる可能性が考えられている.この硬膜の痛覚には侵害刺激受容体であるTRPV1が関与していると考えられている.我々は硬膜に分布する感覚神経にTRPV1が存在し,その主な起源は三叉神経節であることをすでに報告している.今回,慢性片頭痛に効果を示すA型ボツリヌス毒素が,三叉神経節に存在するTRPV1の発現を抑制することを明らかにした.この知見はA型ボツリヌス毒素の慢性片頭痛に対する作用機序は説明する重要な報告と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CSD電極の不具合により,研究がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
CSD測定機器の整備を行い,その後,CSDが三叉神経血管系を活性化させる機序を解析する.
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