研究概要 |
「研究の目的」中枢性尿崩症は視床下部-下垂体に存在するバゾプレシンニューロンの障害に起因し、多飲、多尿を示す難治性の疾患であり、再生医療の開発が切望されている疾患の一つである。近年マウスES細胞からバゾプレシンニューロンへの分化法が開発された。このES由来バゾプレシン細胞(以下ES-AVP細胞)を利用して、中枢性尿崩症モデル動物における細胞治療法の開発を行なうのが本研究の目的である。 「平成22年度研究計画および成果」ES-AVP細胞について、培養技術を確立し、治療用細胞としての妥当性を示すべく、以下の目標を設定し、それぞれにおいて成果を得た。 1. マウスES-AVP産生細胞の選択的分化誘導法の改良・従来、無血清浮遊培養法(SFEBq/gfCDM法)で誘導される視床下部前駆細胞を純化する為に転写因子であるRaxによるソーティングを行っていたが、ソーティング過程を省いても同程度のバゾプレシンニューロンが得られることを見出した。 2. ES-AVP細胞におけるAVP分泌調節の検討・ES細胞塊にそれぞれNa+, K+,マンニトールを添加すると培養液中へのバゾプレシン分泌が十数倍に増加しており、Na-ATPチャンネル、カリウムチャンネル、浸透圧チャンネルなど生体と同様の機能性蛋白の発現が示唆された。 3. 各種視床下部ペプチドニューロン出現の経過・視床下部前駆細胞系において、バゾプレシンだけでなくNPY, MCH, TRH, CRHなど各種ペプチドの発現が経時的に上昇することを見出した。 4. 自然発症モデル動物(Brattleboro rat)の系統維持 5. 脳定位手術による微量注入法の開発・ステレオ手術と微量ポンプを組み合わせることによりバゾプレシン神経核の一つである視索上核付近への微量注入技術を開発した。 以上の成果を踏まえて、平成23年度は実際にES-AVP細胞をモデル動物に移植し、生着率、治療効果を検討する。
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