研究課題/領域番号 |
22390188
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大磯 ユタカ 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40203707)
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研究分担者 |
長崎 弘 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (30420384)
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キーワード | 中枢性尿崩症 / 再生医療 / バゾプレシン / マウスES細胞 / 無血清浮遊培養法 / 視床下部前駆細胞 |
研究概要 |
「研究の目的」 中枢性尿崩症は視床下部-下垂体後葉系に存在するバゾプレシ(AVP)ンニューロンの障害に起因し、多飲、多尿を示す難治性の疾患であり、再生医療の開発が切望されている疾患の一つである。近年マウスES細胞からAVPニューロンへの分化法が開発された。このES由来AVP細胞(以下ES-AVP細胞)を利用して、中枢性尿崩症モデル動物における細胞治療法の開発を行なうことを目的とした。 平成23年度計画の実施と結果:前年度の成果を踏まえて、平成23年度は実際にES-AVP細胞をモデル動物に移植し、生着率、治療効果を検討した。対照群としては生理食塩水を同量同様の手技で注入した。 ・細胞移植:尿崩症モデル動物であるBrattleboro ratの右視床下部視索上核近傍に片側性にES-AVP細胞を2000個移植した。 ・細胞の生着:生着率を調べるためマウス脳切片における移植細胞の経過を移植後8週まで観察した。移植細胞は経過とともに減少したが、AVP陽性細胞は8週後も残存していた。 ・治療効果:移植ラットを代謝ケージで8週間飼育して尿量,飲水量、体重、尿中AVP量などの生理的パラメータをモニターした。尿量及び飲水量は4週目から減少傾向を示し、8週目では平均30%程度の減少が見られた。しかし尿中AVP排泄量は有為な変化をみていない。また、8週目において、12時間脱水負荷を行ったが、尿中AVP量に変化はなかった。 ・安全性:今回は8週まで観察したが、細胞のがん化や奇形種をはじめとするいかなる腫瘍性病変は発生しなかった。移植細胞がAVP調節性をもたず、過量のホルモンを分泌する可能性も想定したが、今回の結果ではそこまでのAVP分泌は無く、調節性については判断できず次年度の研究で検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尿崩症モデル動物に対する細胞移植実験をこれまで4例行ない、全て尿量が30%程度減少する結果を得ている。現在さらに例数を増やして結果を確定的なものにするべく研究を進行中である。但し、視床下部誘導したES細胞から、AVP細胞を純化する方法については当初計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ES-AVP細胞移植でモデル動物の尿量減少という治療効果を得ているものの、移植例数は対照群を含めてまだ8匹と少数であるため、統計的有意差をもった結果ではない。このため、対照群と治療群が各10匹になるまで同じ実験を重ね確認する。遅れているAVP細胞の純化について、現在AVP遺伝子座に標識RFPあるいはGFP標識遺伝子をノックイン-ノックアウトするES細胞を作成中であり、効率にAVP細胞を含む細胞集団を移植に用いることが出来るようになると予想している。
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