研究課題
正常ヒト甲状腺初代培養細胞から多分化能幹細胞様細胞を誘導することに成功した。この細胞は、サイログロブリン発現陰性のみならず、サイトケラチン発現等の上皮系細胞の性質も失っており、逆にビメンチン発現など、間葉系細胞の性質を獲得していた。この細胞は、血清やTSH等の刺激により、再び上皮系細胞の性質を再獲得し、サイログロブリンの発現も誘導・分化される。このことにより、甲状腺の分化細胞と幹細胞の間には、リプログラミングや上皮-間葉転換が深く関わっていることが示唆された。さらにこれは、発癌時の癌幹細胞の発生にも新たな視点をもたらすものである。また、甲状腺癌発症関連遺伝子のひとつと考えられているFOXE1の機能解析を行うため、正常甲状腺細胞株にレンチウイルスベースのshRNAシステムを用い、ドキシサイクリン添加によりFOXE1発現をノックダウンできる細胞株を樹立した。また、種々の癌遺伝子(RET/PTC1、BRAFV600E)、幹細胞関連遺伝子(Bmi-1、hTERT)を発現させるためのレンチウイルス発現ベクターの構築も行い、今後、本格的な機能解析を予定している。甲状腺癌の多数のサンプルを用い、日本人症例でFOXE1、NKX2-1近傍ののSNPsが甲状腺癌発症と関連することを明らかにした。これまで、甲状腺癌関連SNPの報告は、すべて白人症例を対象としたものであり、本邦にとって重要な結果である。さらに、分子標的剤Imatinibが、従来の化学療法・放射線治療時のNF-kappaB活性上昇を抑制することを見出し、今後、タキサン系抗癌剤や放射線治療とImatinibの併用療法を検討する。予後不良な甲状腺未分化癌の新規治療法となることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
研究は様々な方向に進展し、順調に結果も得られつつある。
今後も、予定通り研究を推進する。
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