研究課題
新規生理活性ペプチドNHP(Novel Hypothalamic Peptides)の全身の局在を検討した。神経内分泌細胞の上精から単離したNHPの3つが、末梢臓器である膵臓で、インスリンと共存していた。マウス由来膵ベータ細胞株であるMIN6に3つのNHPを投与すると、2つのNHPが高グルコース環境下でインスリン分泌を促進した。この作用は、マウス単離膵島においても同様に観察された。次に、NHPによるインスリン分泌促進の機序をカルシウムイメージングで観察した。1つのNHPは、高血糖時に細胞内カルシウムを長時間にわたって増加させた。もう1つのNHPは、カルシウムの増強反応は認められなかったが、GLP-1の作用を増強することから、cAMP系を活性化することでインスリン分泌に貢献した。ラットを用いた糖負荷試験において、カルシウム増強に機能するNHPの投与は、インスリン分泌を増やした。もう一方は、NHPそのもののインスリン分泌作用はわずかであったが、GLP-1のインスリン分泌作用を増強した。これらNHPの血中濃度はインスリノーマ患者で高いことから、インスリンと共に分泌されることが推察された。またインスリン分泌刺激には高濃度のNHPが必要であり、この作用が循環を介してではなく、自己分泌や傍分泌による局所での反応であることが推察された。これらNHPの1つはインスリン負荷試験時の糖取り込みを促進し、全身の糖代謝調節に関与していた。以上より、われわれが同定し中枢での局在を明らかにしたNHPは、摂食や飲水等の行動を調節するだけでなく、末梢臓器にも発現し、糖代謝調節に機能していた。NHPの受容体が不明であるため、詳細の分子機序は不明であるが、NHP投与によるベータ細胞の応答性は従来のインスリン分泌刺激物質と異なるものである。先行する薬剤との併用を含めた、新たな糖尿病治療薬開発の可能性を提示した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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