研究概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)と炎症性疾患(HTLV-1脊髄症, ぶどう膜炎等)を惹起するが、その発症機構は未だ不明である。我々はHTLV-1のアンチセンス転写産物であるHTLV-1 bZIP factor(HBZ)遺伝子が発がんのみならず炎症性疾患にも重要な働きをしていることを見出した。HBZはTGF-β/Smad経路の活性化によりFoxp3遺伝子の転写を亢進させるが、その発現は不安定であり、Foxp3陰性の細胞(exFoxp3 T細胞)へと変換することを明らかにした。また、HBZトランスジェニックマウスでは、制御性Tリンパ球の機能が低下していた。その機序としてHBZはFoxp3と結合して、その作用を減弱させることを明らかにした。Foxp3の標的遺伝子で発現亢進するものは、その亢進を抑制し、また発現抑制するものは、その抑制が減弱していた。HBZはFoxp3のDNA結合能には影響は与えず、Foxp3と複合体を形成するEosとも結合していた。この実験から、HBZによるFoxp3機能異常の機序が明らかとなった。Foxp3発現細胞にHBZを導入するとin vivoにおける免疫抑制機能が抑制されることを証明した。このようなHBZによるFoxp3誘導とその機能抑制は、ウイルス感染細胞が生体内で生存する機構と結びついているものと予想される。
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