研究課題
造血幹細胞移植療法は再生医療の中で最も実用化され臨床に定着している。今では、造血幹細胞の供給源として、骨髄細胞、末梢血幹細胞やさい帯血が利用されているが、移植を成功させるためには充分な数の良質な造血幹細胞の確保が必須である。骨髄の提供者やさい帯血の細胞数には限度があり、更なる発展の障壁になっている。また、移植片対宿主病の問題を克服する必要もある。そこでES細胞やiPS細胞から造血幹細胞を誘導し、ex vivoで造血幹細胞を増幅可能な新技術の開発が待たれる。しかし、ES細胞やiPS細胞を培養し、各種の成熟血球細胞の産生を誘導することは可能であるが、造血幹細胞を直接誘導することはできない。研究室ではまず造血幹細胞の活性を支持する2大内的因子であるポリコーム複合体1やHoxb4が供にDNA複製制御因子Gemininに対するE3ユビキチンリガーゼとして機能していることを独自に明らかにした。Gemininは細胞の増殖と分化を同時に制御していることからGemininが造血幹細胞の活性を制御する中核因子として機能していることが期待される。そこで、Geminin遺伝子に蛍光タンパク質遺伝子EYFPをノックインし、Geminin-EYFP融合タンパク質が発現するようにしたGeminin-EYFPノックインマウスを作製するとともに、ホモ接合型Geminin-EYFPノックインマウスの胎仔線維芽細胞からiPS細胞を作製した。また、レトロウイルスベクーやGeminininに対するshRNAを用いてGemininの発現を自在に操作できる実験系の開発を行った。これらを駆使することによってGeminin量を追跡しつつその発現を操作し、造血幹細胞の発生、増幅、さらに各種造血ストレスに対する造血幹細胞の安定性を誘導可能な新技術の開発を目指している。
2: おおむね順調に進展している
Geminin-EYFPノックインマウスの作製、そのホモ接合型胎仔線維芽細胞からのiPS細胞の作製、そして、Gemininの発現量を操作するための高発現ベクターやshRNAを用いたノックダウンベクターの作製に成功しており、おおむね順調に研究を進めることができている。
本年までに作製準備したものを駆使し、Gemininの発現レベルを調節しながら、造血幹細胞の増幅、発生の誘導、さらに各種造血ストレスに対する造血幹細胞の安定性を誘導することを試み、本研究を強力に推進する計画である。特別問題点はないが、造血幹細胞の機能解析には造血幹細胞移植を行ってその活性を確認することが必須であるが、解析が長期に渡るため、迅速な研究の推進を心掛ける計画である。
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