研究課題
1.遺伝子環境相互作用において鍵を握る免疫系遺伝子として、TLR7およびIRF7を候補遺伝子として、日本人集団における全身性エリテマトーデス(SLE)との関連研究を施行した。PHRF1-IRF7領域については、国外におけるゲノムワイド関連研究によりSLEとの関連が報告されていたものの、結果はさまざまであり、国内における研究も見られなかった。本研究では、機能的重要性が想定されるIRF7遺伝子のリシークエンス解析により、多数の多型部位を検出したものの、SLEとの有意な関連は認められなかった。一方、隣接するPHRF1遺伝子のSNPrs4963128が、抗Sm抗体陽性SLE、腎症合併SLEにおいて有意に関連することを見出した。TLR7遺伝子においては、すでに多施設共同研究により東アジア集団におけるSLEとの関連を報告した3'非翻訳領域の単一塩基多型(SNP)rs3853839とは独立に、イントロンのSNPrs179019とrs179010が関連することを見出した。2.ヨーロッパ系集団、アジア集団においてSLEや関節リウマチとの関連が報告されているユビキチン結合酵素UBE2L3と全身性強皮症(SSc)との関連を検討し、SScにおいても有意な関連が検出されること、関連はびまん皮膚硬化型SSc、抗topoisomeraseI抗体陽性群において顕著であることを、国内外に先駆けて見いだした。3.日本人集団においてSLEとの関連が確立した8遺伝子座に個人が有するリスクアリル数と発症との関連を検討し、健常者の中央値である7アリルと比較して、10アリルを有する場合にはオッズ比が4.17、11アリル以上を有する場合にはオッズ比8.77と有意にリスクが上昇し、4アリル以下である場合にはオッズ比は0.15と有意に低下することを見出した。以上の知見は、膠原病発症における遺伝子環境相互作用の検討の基盤となるとともに、日本人集団における膠原病のゲノム医療の実現上、有用な情報を提供すると考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
8個の疾患感受性遺伝子におけるリスクアリル数と発症リスクとの関連を明らかにするとともに、臨床病型と関連する遺伝子を複数見出し、日本人集団における膠原病のゲノム医療に貢献しうる知見を得た。また、tagSNPとの関連が検出された複数の遺伝子について、筑波大に導入された次世代シークエンサーを用いたリシークエンス解析も進行中である。
共同研究体制により収集された多数の試料と臨床情報を活用し、臨床経過や薬剤応答性と関連する遺伝子多型を探索し、ゲノム医療に応用可能なバイオマーカーの検出をさらに進める。また、次世代シークエンサーを用いた解析により、分子機構を説明しうる病因的多型の検出を進める。また、遺伝子環境相互作用の検討を進めるために、膠原病との関連が知られている環境因子であるシリカ曝露や微生物などの環境因子に応答する分子群であるインフラマソーム関連遺伝子群の多様性解析と関連研究を進める。
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