研究課題/領域番号 |
22390199
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
土屋 尚之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60231437)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 全身性エリテマトーデス / ANCA関連血管炎 / 疾患感受性遺伝子 / 薬剤応答性関連遺伝子 |
研究概要 |
1) 関節リウマチ(RA)におけるmethotrexate(MTX)治療を受ける一部の患者に誘発される間質性肺障害は、しばしば重症化し、致命的となることもある重要な有害事象である。本研究では、HLA-A*31:01がRAにおけるMTX誘発性間質性肺障害誘発性間質性肺障害に有意に関連することを検出した。この成果は、RAの個別化医療の実現に寄与しうる重要な知見である。 2) 日本人集団におけるANCA関連血管炎(AAV)と,複数の自己免疫疾患に対する関連が確立しているIRF5、STAT4, BLKおよびTNIP1との関連を検討した。STAT4においては、ほかの自己免疫疾患同様、rs7574865T/T遺伝子型がMPO-ANCA陽性血管炎において有意に増加していた。一方、IRF5においては、ほかの膠原病におけるnon-risk alleleであり、IRF5 mRNAレベル低下と関連するrs10954213GアリルおよびG/G遺伝子型が、MPO-ANCA陽性血管炎、顕微鏡的多発血管炎(MPA)群において有意に増加していた。このことから、MPO-ANCA関連血管炎あるいはMPAにおいて、遺伝的に規定されたtype I interferon低産生が発症リスクと関連することが示唆された。 3) 他集団におけるSLEとの関連が報告されているPRDM1-ATG5領域、UBE2L3とSLEとの関連を日本人集団において検証した。 4) Type I interferon pathway関連遺伝子群を候補遺伝子とした解析により、IRF2遺伝子多型が全身性エリテマトーデス(SLE)と関連することを示唆する知見を得た。今後、リシークエンス解析により、一義的多型を同定し、分子機構の解明を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、①日本人集団において遺伝学的寄与度の高い膠原病の疾患感受性遺伝子を同定すること、②ゲノム医療に応用しうるバイオマーカーを探索すること、さらに、③環境応答遺伝子多型の検討により、遺伝子環境相互作用解明の基礎データを得ることを主な目的に施行した。 ①については、TLR7 が日本人を含むアジア集団においてSLEの遺伝因子であることを報告するとともに、以前報告したBLK 領域同様、TNIP1 も日本人集団における寄与度の高いSLE 関連遺伝子であることを報告した。また他集団において関連が報告されているPHRF1-IRF7領域、PRDM1-ATG5領域, UBE2L3とSLE、全身性強皮症およびANCA関連血管炎との関連を検証した。 ②に関しては、日本人集団においてSLE との関連が確立した8遺伝子座に個人が有するリスクアリル数と発症との関連を検討し、健常者の中央値である7アリルと比較して、10 アリルを有する場合にはオッズ比が4.17、11 アリル以上を有する場合にはオッズ比8.77 とリスクの上昇を示し、4 アリル以下である場合にはオッズ比は0.15 と有意に低下することを見出した。 ③に関しては、各種自然免疫系遺伝子、インフラマソーム関連遺伝子の関連解析を施行するとともに、環境因子として重要である薬剤応答性関連遺伝子の検討を行い、RA におけるmethotrexate 誘導性間質性肺病変とHLA-A*31:01 との関連を見出した。これらは、バイオマーカーとしての有用性が期待される知見である。 以上を含め、平成22 年度以降、上記研究課題に関連する英文原著論文19編を報告してきたことから、本研究課題は、当初の計画以上に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる平成25年度には、現在研究が進行している、環境応答関連遺伝子の検討を完了する。これに加え、次期研究計画への橋渡しを視野に入れ、以下の検討を進める。 これまでの研究により、多くの疾患関連遺伝子が明らかになったものの、それらの多くは、病態を異にする複数の膠原病・自己免疫疾患に共通のものであり、疾患特異性を説明し得ないことが明らかになった。また、これまでに見出された疾患関連遺伝子のみでは、遺伝因子の一部のみしか説明し得ないことも周知の事実である。未解明の遺伝因子には、疾患特異性の高い遺伝因子が多数存在することが想定される。 既知の疾患感受性遺伝子の中では、遺伝的寄与度、疾患特異性の両面において、MHC領域は他の遺伝因子と比較して際立って高い。 これらの背景に基づき、最終年度である平成25年度中に、抗原特異的免疫応答に寄与しうるHLA遺伝子、自己抗原遺伝子および免疫グロブリン様受容体スーパーファミリー遺伝子群の関連研究と、遺伝子間相互作用の解析を進め、疾患特異性が高く、自己免疫疾患の本質的な病因の解明につながる知見を得ることを目指す。
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