原発性免疫不全症は免疫遺伝子の突然変異が原因で発症する。その1つの高IgE症候群は黄色ブドウ球菌による皮膚膿瘍と肺炎、アトピー性皮膚炎、血清IgEの著しい高値を呈するが、その多くで独特の骨異常(骨粗鬆症、病的骨折、脊椎側弯、乳歯の脱落遅延)を合併する。今回我々がその原因遺伝子を世界に先駆けて発見した高IgE症候群において、STAT3分子のドミナントネガティブ(DN)変異がどのような機序でこれらの骨異常を発症するかを解明し、その新たな治療標的を発見することを目的とした検討を行った。 高IgE症候群における骨粗鬆症の形成機構を詳細に検討するために、STAT3-DN変異体を発現するコンディショナルノックインマウスを作成した。このマウスにおいて、新生骨に沈着する蛍光色素カルセインを96時間間隔で2回投与し、骨新生速度、すなわち生体内における骨芽細胞機能を評価した。その結果、骨芽細胞の機能低下が明らかになった。さらに、このマウスの破骨細胞分化を生体内で評価すると、破骨細胞数の減少が認められた。試験管内における破骨細胞分化能は正常であったが、共培養法による破骨細胞分化の検討で、骨芽細胞のRANKリガンドの発現低下が原因で破骨細胞分化が低下していることが明らかになった。以上より、高IgE症候群における骨異常は2つの骨芽細胞の異常(分化障害とRANKリガンド発現低下)により引き起こされていることが明らかになった。
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