研究概要 |
1)GC/MSとタンデムマスによる代謝異常の生化学診断 : 日本と海外からの依頼検体のGC/MS分析、タンデムマス分析による代謝異常診断を行った。2001~2010年の間に、日本国内から12,721例の依頼を受け238例(1,9%の発見率)の患者を診断した。アジア諸国からは4,579例の検査依頼を484例(10.6%の発見率)を診断した。アジアの中でも疾患内訳が国ごとに異なることがわかった。例えば、南アジア(ベトナム、インドなど)では日本に比べてメープルシロップ尿症、βケトチオラーゼ欠損症、オキソプロリン血症)が多いことがわかった。特に、ベトナムにはβケトチラーゼ欠損症が多く、ベトナム人固有のコモン変異(シェアー80%)が発見された。今後アジア諸国との共同研究によって民族的な特徴を明らかにする基礎データとなりつつある。 2)MCAD欠損症の臨床遺伝的解析 : 日本人患者20例(タンデムマス、GC/MSの検査異常で発見)を検討した。うち2例はキャリヤーであった。アジアでこのような多数検体の研究はない。発症してから発見された9例中8例は死亡するか後遺症を残していた。発症前にマススクリーニングなどで発見された患者9例は全例正常発達をしていた。新生児マススクリーニングの有効性が証明される所見である。2例のキャリヤーだった症例は無症状であった。またキャリヤーでもタンデムマスのスクリーニングで陽性になることがわかった。さらに遺伝子解析では、c.449-452del変異が、日本人患者固有のコモン変異であることがわかった。韓国の症例でも比較的多く、東アジアに多い可能性がある。 3)in vitro probe assay(IVP assay)の新規診断法の確立 : IVP assayで診断の難しかった全身性カルニチン欠乏症(カルニチントランスポーター欠損症)について、実験の条件を改良して有効な診断法を確立した。またそれを応用して、これまで診断困難であったCPT1欠損症の診断法もほぼ確立した。実際の患者で検証中である。
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