研究課題/領域番号 |
22390208
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 清次 島根大学, 医学部, 教授 (60144044)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ミトコンドリアβ酸化 / 脂肪酸代謝異常症 / 急性脳症 / in vitro probe assay / 分子解析 / ベザフィブラート / 全身性カルニチン欠乏症 |
研究概要 |
平成24年度の主な研究成果は以下のとおりである。 1)GC/MSとタンデムマスによる代謝異常の生化学診断:2012年、検査依頼数はGC/MS分析日本から1,541件、アジア諸国から725件、タンデムマス分析は日本1.133件(患者発見率約2.0%)、アジア諸国から504件(約10%)であった。疾患内訳はアジアと日本以外のアジア諸国で異なることがわかった。 2)in vitro probe assay(IVP assay)の新規診断法の確立:従来IVP assayで診断不可能であった全身性カルニチン欠乏症とCPT1欠損症の診断法を確立し論文発表した。 3)PPARアゴニストのベザフィブラート(BEZ)による脂肪酸代謝異常症の治療の有効性:代表的な6種類の脂肪酸代謝異常症の細胞でin vitro probe assayを用いてBEZの有効性を証明した。厳しい臨床経過をとっていた日本人小児患者にBEZを投与し劇的な臨床的効果を証明した。医師主導治験を検討に結びついている。 4)発熱ストレスによる脂肪酸代謝に及ぼす影響:以前高熱下では全体にβ酸化が亢進するものの長鎖脂肪酸のβ酸化が抑制される可能性を示した。発熱時に上昇することの多いサイトカインのβ酸化に及ぼす影響を調べたところ、IL1βとTNFαが長鎖脂肪酸の代謝に抑制的に働くことを観察した。今後種々の薬剤によってこれらを改善する種々の薬剤を検討して治療法向上に役立てたい。 5)特定薬剤の脂肪酸酸化に及ぼす影響:小児期に急性脳症に結びつく可能性のある薬剤がいくつか知られている。今年度アスピリン(サリチル酸の前駆体)の正常細胞に対する影響を調べたところ、長鎖脂肪酸のβ酸化を抑制することがわかった。今後他の薬剤もこの実験系によって毒性を明らかにしてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
β酸化能を評価するIVP assayの実験系を確立したので、種々の薬剤、あるいは細菌毒素等について比較的に簡便に評価できる可能性が広がった。またPPARアゴニストのベザフィブラートの脂肪酸代謝異常症への効果について発表したところ、国内外から反響が大きく、日本で医師主導治験を始める準備段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
質量分析法による国内外の多数の患者を診断してきたので、さらに拡大して、アジア諸国を中心に国際共同研究に発展させたい。 IVP assayを応用して治療薬開発、治療法向上に貢献させる研究に発展させたい。
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