研究課題/領域番号 |
22390209
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
遠藤 文夫 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (00176801)
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研究分担者 |
中村 公俊 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30336234)
松本 志郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (70467992)
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キーワード | 再生医学 / 移植・再生医療 / 糖尿病 / 発生・分化 / バイオテクノロジー |
研究概要 |
昨年に引き続き、ブタおよびヒト唾液腺から内胚葉系幹細胞を分離・精製し、移植モデルへの移植実験を進めた。前年度に加え本年度では、少量の組織から短時間に幹細胞を分離する方法を見出し、更に移植実験を実施した。どのような細胞を利用する場合でも移植までの準備期間及び移植に必要な細胞数の確保が必要不可欠であり、その第1段階である少量のブタおよびヒト体組織からの分離が可能となり、第2段階としての大量培養にも成功した意義は大きい。特にips細胞と一部共通した生物学的特徴を有するヒト唾液腺由来幹細胞を用いた移植研究は将来のips細胞移植への応用性が高い。更に移植成績および癌化の防止に必要不可欠であると考えられている標的臓器への分化誘導についても肝臓への分化を促進する立体培養条件・液性因子の解明が進んだ点も将来の応用に重要な点である。特に、培養液中のアミノ酸が分化に及ぼす影響について3種類のアミノ酸が分化を誘導することが判明した。逆に、これらのアミノ酸を欠乏させることで未分化な状態を維持する可能性も示唆されており、これらの方法を応用することで培養が難しい幹細胞をより安定的に維持する手助けとなると考えられる。更にこれらのアミノ酸の中で癌の進展を抑制する可能性のある因子が見出された。これらのアミノ酸解析については、全て当研究室が所有する高速微量アミノ酸分析機(HPLC/MS)を用いて行うことで可能となった。この機器を用いて、難病疾患モデルのアミノ酸分析を行い、疾患に特徴的にプロファイルが変化することが見出されている。これらの予備実験から実際に難病治療目的で肝臓移植が行われた症例における移植前後の血中アミン酸プロファイルを行ったところ、数種類のアミン酸の補充が術後管理に重要であることが分かった。アミノ酸プロファイルは現実的に臨床応用可能な技術であり、小児難病治療において大きな役割を担う可能性が示唆された0
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度で目的として挙げた(1)幹細胞の分離・選択、(2)幹細胞の選択、(3)ヒト幹細胞の肝臓への分化と遺伝子発現の検討、(4)大量培養系の確立についてはほぼ達成できた。更に幹細胞維持および分化に重要なアミノ酸を見出すととができ、やや伸展したともいえるが、遺伝子変化の調査が不完全であり次年度に繰り越した。これは、ヒト幹細胞が移植に用いるために大量に使用しなければならなかったことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子変化に基づく治療戦略の見直しについては、ヒトのサンプルが非常に貴重であることからサンプルが多くえられるブタを用いて行う。遺伝子変化の評価にはreal time PCR(当科所有のABIおよびエッペンドルフ社)機器を用いて半定量的に評価を行うことで推進する。更に、評価方法として免疫蛍光染色法を追加することでより詳細な評価を行う。液性因子、特に本年度重要性が示されたアミノ酸については、高速微量アミノ酸分析機を用いて、引き続き幹細胞の未分化維持、分化誘導、移植効果の増強効果等について検討をつづける。
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