研究概要 |
TREC(T cell receptor recombination circles)とKREC(Kappa-chain recombination excision circles)は、T細胞レセプターとB細胞レセプターの組み替えの時に生じる環状DNAであり、T細胞新生、B細胞新生の良いマーカーである。TREC,KRECのreal time PCRによる測定法を確立し、以下の研究成果を得た。 1.KREC測定によるB細胞欠損症の新生児スクリーニング法の確立 健常新生児133人と、B細胞欠損患者35人の乾燥濾紙血のKRECを測定した。その結果、健常新生児では全員で陽性、B細胞欠損患者では全員で陰性であり、新生児マススクリーニングへの応用への基礎データが得られた。 2.TREC、KREC同時測定法の確立 TREC,KRECを同時測定できるreal time PCR法を確立した。さらにRNAsePを同時測定することにより、DNA量測定の手順を省略できることも明らかにした。これにより、T細胞欠損症とB細胞欠損症の同時新生児スクリーニングが、より効率的に行えることを示した。 3.先天性免疫不全症のTREC,KRECによる病態解明 先天性免疫不全症の中で最も頻度の高いCommon variable immunodeficiency (CVID,分類不能型免疫不全症)患者43例でTREC,KRECの測定を行った。その結果、A群(TREC(+),KREC(+)),B群(TREC(+),KREC(-))、C群(TREC(-),KREC(+))、D群(TREC(-),KREC(-))の4群に分かれることを見出した。4群のリンパ球サブセット、臨床症状、予後との相関を検討し、明確に異なることが明らかになった。また様々な免疫不全症におけるTREC,KRECの解析を行い、原因遺伝子の機能と相関させた。
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