研究概要 |
先天性免疫不全症の新生児スクリーニングの開発と病態解明を目的に以下の研究を行った。 a) TREC/KREC 測定による免疫不全症新生児スクリーニング法の確立 TREC(T cell receptor recombination circles)とKREC (Kappa-chain recombination excision circles)は、T細胞新生、B細胞新生の良いマーカーである。新生児乾燥濾紙血のTREC/KRECを測定した結果、健常新生児では全員でTREC/KRECがともに陽性、T細胞欠損患者ではTRECが陰性、B細胞欠損患者ではKRECが陰性であった。Ataxia telangiectasiaではKRECが全員陰性であった。以上、先天性免疫不全症新生児スクリーニング法を開発した。 b) TREC/KREC測定による免疫不全症の病態解明 先天性免疫不全症の中で最も頻度の高いCommon variable immunodeficiency (CVID,分類不能型免疫不全症)患者40例でTREC, KRECの測定を行った。その結果、A群(TREC(+), KREC(+)), B群(TREC(+),KREC(-))、C群(TREC(-), KREC(+))、D群(TREC(-), KREC(-))の4群に分かれることを見出した。4群で臨床症状および生命予後が有意に異なること、γグロブリン定期補充で予後が良い群、造血幹細胞移植が必要な群が鑑別でき、TREC/KREC測定により免疫不全症の病態に即した治療法が選択できることを示した。さらに、A群にB細胞の抗体産生細胞への分化障害があるTACI異常症、ICF症候群、D群にRAG異常症、GATA2異常症、C群にFANCE異常症を見出すことが出来た。すなわちTREC/KRECが病態解明につながり、診断に有用である事を明らかにした。
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