本研究は新生児疾患を、サイトカインプロファイルを中心とした免疫応答の面から解析し、今後の新生児疾患の治療の改善を図ろうというものである。初年度にあたる22年度は倫理申請から検体収集までの研究方法の基盤確立が最大の目標だったが、自治医大、独協医大、東京女子医大のいずれでも検体収集を開始できた。また、一部、結果の報告も開始した。 本研究では慢性肺疾患(CLD)、感染症など免疫応答が病態に深く関わると予想される疾患を検討対象としているが、22年度は、リステリア感染症における早産児の比較的強い免疫応答性をPediatrics Intに報告した。また、ミルクアレルギーの症例で特徴的なIL-5のみの産生亢進を確認し、米国小児科学会誌Pediatricsに報告した。さらに、早産児で胎内発症のHemophagocytic Lymphohistiocytosisの症例において、IL-6、IL-8を中心としたいくつかのサイトカインが重要な役割を果たしていることをJ PediatrHematol Oncolに報告した。 CLDについては、検体収集を始め、サイトカイン測定を開始しているが、今後、転写因子、遺伝子発現の測定、解析を進める予定である。 遺伝子多型解析については、すでに世界的にいくつかの報告がなされ、最初から遺伝子を絞ることでは意義のある結果が得にくいことが明らかとなってきた。本研究では当初、2つの遺伝子多型のみの解析を行うとしていたが、その計画を変更し、10種類の遺伝子多型をターゲットとし、解析法もより簡便なTaqMan法を用いることとした。この点について検討を行い、新生児の2μlの血液でも、これらの多型解析が可能であることを確認した。今後、この変更点について、倫理承認を得て、解析を開始する予定である。
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