研究概要 |
我々は、皮膚基底膜接着分子の先天異常により表皮が容易に剥離する遺伝性皮膚難病「表皮水疱症」における剥離表皮の再生機序に骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)が寄与していることを見出した。本年は、1.血中動員されたMSCが健常部皮膚ではなく損傷部皮膚特異的集積するメカニズム解明、2.骨髄MSCの中で表皮角化細胞へと間葉一上皮転換(mesencyamal-epithelial transition, MET)する分画の同定、を進めた。1.血中動員されたMSCの傷皮膚特異的集貝機構:GFP骨髄移植マウス背部に移植した皮膚片にGFP陽性骨髄由来細胞が集積して骨髄由来表皮細胞を形成するメカニズムを探索した。その結果、以下の事実を明らかにした。(1)移植皮膚片は低酸素環境によりケモカインCXCL12(SDF-1α)を産生すること、(2)骨髄内MSCは細胞表面にCXCL12の受容体であるCXCR4を発現していること、(3)骨髄由来培養MSCは、損傷組織が放出するhigh mobility group box 1 (HMGB1)刺激によりCXCR4発現を増強すること、(4)HMG1刺激MSCは非刺激MSCに比較してCXCL12に対するより強い遊走活性を示した。(5)CXCR4阻害剤はMSCの植皮部位への特異的集積を抑制した。以上の結果から、血中動員された骨髄MSCの損傷部皮膚特異的集積はCXCR4-CXCL12により得られていることが明らかとなった。2.MET性の高い骨髄MSC内画の同定:骨髄内MSCの中で、さらにケラチン5(K5)陽性上皮細胞へと分化する細胞分画の探索を進めた。その結果、骨髄内lineage陰性、c-kit陰性、PDGFRα陽性細胞(L^-K^-P^+細胞)がK5陽性骨由来上皮細胞の起源であることが明らかとなった。
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