研究課題
我々は、皮膚基底膜接着分子の先天異常により表皮が容易に剥離する遺伝性皮膚難病「表皮水疱症」における剥離表皮の再生機序に骨髄内間葉系細胞が寄与していることを見出した。本研究は、剥離表皮再生に寄与する骨髄間葉系細胞の骨髄内起源解明、表皮細胞への形質転換メカニズム解明を目的とする。本年は、1)表皮細胞分化能を持つ骨髄間葉系細胞の同定、2)損傷部皮膚に集積した骨髄間葉系細胞の組織再生寄与評価、に関する研究を進めた。1)表皮細胞分化能を持つ骨髄間葉系細胞の同定:昨年までの研究で、骨髄内のLin^-/PDGFRα^+/c-kit^-細胞が表皮分化能を持つことが明らかになった。平成23年度は、骨髄内Lin^-/PDGFRα^+/c-kit^-細胞をさらに細分画し、表皮細胞特異的ケラチン5を発現する細胞に特異的に発現する細胞表面マーカーを探索した。その結果、骨髄内PDGFRα^+/Sca-1^+細胞中で、さらに培養後にSSEA3発現が誘導される細胞分画からケラチン5陽性上皮細胞が高頻度に出現することが明らかとなった。2)損傷部皮膚に集積した骨髄間葉系細胞の組織再生寄与評価:昨年度までの研究で、マウス背部に移植した皮膚片に骨髄由来PDGFRα^+細胞が集積すること、その集積には移植皮膚片の血管内皮が産生するケモカインCXCL12と、PDGFRα^+細胞表面に発現するCXCL12受容体CXCR4の相互作用が寄与していることが明らかとなった。そこで平成23年度は、CXCR4のアンタゴニストAMD3100を投与して移植皮膚片へのPDGFRα^+細胞集積を抑制し、植皮片再生過程におけるPDGFRα^+細胞の寄与を評価した。皮膚移植後7日目の植皮片内に存在する骨髄由来PDGFRα^+細胞は植皮片内全細胞のおよそ1.4%程度であった。一方AMD3100投与マウスでは、移植7日目の植皮片で骨髄由来PDGFRα^+細胞は存在せず、移植皮膚片内には著明な壊死が観察された。骨髄由来PDGFRα^+細胞の組織再生寄与が示された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は、予定していた表皮分化能を持つ骨髄間葉系細胞の探索、骨髄由来間葉系細胞による組織再生誘導評価系の確立が順調に進んだ。
平成24年度は、表皮分化脳を持つ骨髄間葉系細胞が上皮細胞へと形質転換する分子基盤解明を進める。
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