研究課題
我々は、皮膚基底膜接着分子の先天異常により表皮が容易に剥離する遺伝性皮膚難病「表皮水疱症」における剥離表皮の再生機序に骨髄内間葉系細胞が寄与していることを見出した。本研究は、剥離表皮再生に寄与する骨髄間葉系細胞の骨髄内起源、表皮細胞への形質転換メカニズムを解明し、難病治療へとつながることを目標とする。これまでの研究により、骨髄内Lin-/PDGFR+/c-kit-間葉系幹細胞がケモカインSDF-1αの受容体CXCR4を発現し、損傷部皮膚の血管内皮細胞が発現するSDF-1αにより損傷部に集積し、間葉‐上皮転換により表皮細胞へと形質転換することが明らかとなった。平成24年度は、GFP骨髄移植マウス背部皮膚への植皮モデルを利用して、植皮片へと集積した骨髄由来間葉系幹細胞の皮膚再生における役割を検討した。その結果、損傷部皮膚に集積した骨髄間葉系幹細胞は血管新生因子Ang1、炎症抑制因子TSG-6を産生・放出するとともに、表皮細胞へと分化して剥離表皮の再生を誘導していることが明らかになった。そこで、骨髄間葉系幹細胞血中動員促進因子であるhigh mobility group box 1(HMGB1)を静脈内投与したところ、植皮片への骨髄由来GFP陽性間葉系幹細胞集積が有意に増加するとともに、皮膚炎の軽減、再生促進効果が確認された。一方、VII型コラーゲンが欠損する表皮水疱症モデルマウスの皮膚移植系を用いて、骨髄由来間葉系幹細胞集積による表皮水疱症皮膚再生メカニズムの解明を進めた。その結果、植皮後数日で植皮片内に集積したGFP陽性骨髄間葉系幹細胞は表皮細胞への形質転換の有無にかかわらずVII型コラーゲンを発現し、皮膚基底膜領域へと供給して表皮剥離を抑制的に制御することが明らかとなった。これらの結果は、骨髄間葉系幹細胞を利用した皮膚炎症抑制・再生誘導治療の有効性を初めて示した結果である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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