研究課題/領域番号 |
22390219
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 和紀 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40301056)
|
研究分担者 |
松岡 洋夫 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00173815)
富田 博秋 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90295064)
麦倉 俊司 東北大学, 病院, 助教 (20375017)
|
キーワード | 早期精神病 / 早期介入 / ARMS / 統合失調症 / 前駆期 / 診断 / 脳構造 / 認知機能 |
研究概要 |
今年度は東日本大震災の影響があり、専門外来の再開、リクルート、データ収集などに遅れが生じた。再開した専門外来において精神病発症リスク状態(At-Risk Mental State)の患者約9名と初回エピソード精神病(First Episode Psychosis: FEP)の患者約8名をリクルートしインテイク評価を行った。以前からの追跡事例については、専門外来での専門診療を行い、インテイク後6ヶ月、12ヶ月評価を実施した。インテイク評価では、ARMSの全般的評価尺度(CAARMS-J)、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)による評価を行い、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)、社会機能評価尺度(SFS-J)、統合失調症認知評価尺度(SCoRS)、日本語版認知洞察尺度(BCIS)、日本語版簡易スキーマ尺度(BCSS)、MRI撮像を行った。 これまでに集められたデータを元に、神経認知機能と社会認知機能についての予備解析を行った。Theory of Mind Picture Stories Task(Bruneら)を用いた社会認知機能の評価では、FEPとARMSはともに、健常者と比べて成績が低下していたが、両群間に差は認めなかった。また、神経認知機能についても、やはりFEPとARMSはともに健常者と比べて成績が低下したが両群に差は認めなかった。相関分析では、FEPの認知機能低下は陰性症状と、ARMSの認知機能低下は抑うつ症状と相関しFEPとARMSの認知機能成績の低下には、異なる病態経路が関与していることが示唆された。また、ARMS患者のもののとらえ方を評価するために認知的洞察についても評価を行った。ARMSでは自己確信性が健常者と比べて高く、自己確信性の高さは妄想や猜疑心を含めた陽性症状と相関することが明らかとなり、患者のもののとらえ方が精神病症状と関連することが明らかにされた。 今後は、MRI画像などその他のデータを統合した上で、ARMSとFEPの早期精神病の予後と関連する指標を明らかにする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年3月11日の東日本大震災の被災により、約1ヶ月研究室への立ち入りができなくなり、また、東北大学病院精神科も外来診療ができなくなった。外来診療再開後も、専門外来の復旧に時間がかかり、また、スタッフの多くが震災後のこころのケア活動に精神科医、心理士として従事することとなり、研究に従事する時間の確保が困難になった。このため、患者のリクルートやデータ収集の計画が大幅に遅れてしまった。また、実施予定であった遺伝子採取についても上記の状況より必要な症例数の確保が困難と考え断念し、これを除くデータによって研究を継続していくことにした。年度後半からは専門外来の運営も当初の軌道に戻り、研究を再開しており、研究を継続している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、以前から追跡しているデータを利用し、できるだけ多くの早期精神病事例の臨床データを解析していく。生物学的指標として遺伝子情報との関連も検討された、解析に必要なサンプル数の確保が難しいため、これ以外の生物学的指標として認知機能、MRIなどのデータと心理社会的な指標とを統合し、臨床的な予後指標の開発を進めて行く。今後は継続的な対象患者のリクルートと、データ解析をおこなっていく。
|